『死を招く料理店(トラットリア)』 ベルンハルト・ヤウマン
本の詳細ページへ
著者: ベルンハルト・ヤウマン /小津薫
出版:扶桑社ミステリー
ISBN:4594048986
発行:2005年 02月
価格:905円 (税込:950円)
採点:4.5点
[帯]
ドイツ推理作家クラブ賞(グラウザー賞)受賞
おいしいイタリア料理を食べながら
ミステリーを執筆できるはずだった…
作家が落ちた、思いがけない罠とは?
ミステリー小説と、現実世界とが同時進行
虚実がもつれあう、二重三重の殺人悲喜劇
[あらすじ]
ローマの私立探偵・ブルネッティはレストラン評論家のフェレッリの監視を続けていた。だが、対象者は豪華な料理を食べた翌日、無惨な姿で発見されてしまう……という物語を書き始めた「わたし」は、ローマの料理店で、食事代をただにしてもらえないかと店主に交渉する。店を舞台に小説を書けば、売り上げも上がるという理屈だ。ところが、彼が作品で描いた事件が、店の中で本当に起きてしまう。
[感想]
構成の妙、個性的な登場人物、奇抜なストーリー展開と優れた特長を兼ね備えた傑作である。
まず、作品の構成がおもしろい。ブルネッティという私立探偵が活躍する物語があり、それを推理小説として書き進める作家「わたし」の手記が外枠を埋める。この「わたし」はローマを訪れたドイツのミステリ作家という設定がされており、これは著者であるベルンハルト・ヤウマン自身をモデルとしているのだ。さらにこの二つの物語それぞれに毒殺事件が起こり、内と外のストーリーが干渉し合うという構造になっている。
次に、作中作の主人公ブルネッティについてだが、この探偵が実にユニーク。一見ハードボイルド風なのだが、次から次へと災難に見舞われ、その度に底抜けにポジティブな思考で乗り切ってしまう。98%が天然、残りは運だけで生きているようなキャラクターなのである。また、この私立探偵の作者である「わたし」がブルネッティとは逆に現実的で、作品の展開に頭を悩ませ、浸食される現実世界に疑心暗鬼になっていく様子が微細に描き出されている。
さらに、何と言ってもこの不思議な展開がすばらしい。動機無き殺人、復活する死者、幻を見ているのではないかと感じてしまうような不可思議な出来事が立て続けに起きる。しかもそれが外枠となる「わたし」の物語とからみ合い、内外両面から事件が解き明かされるという場面も用意されている。味覚をテーマにしたというだけ合って、紹介される料理の描写が巧み。それがトリックやプロットと有機的に関わっている点も特筆に値する。
一つ残念なのは、この作品が五部作の最終巻であること。五感をテーマに、本国ドイツではこれまでに四作品が刊行されていたらしい。これらを続けて読んだドイツのミステリファンは、このアクロバティックな結末にさぞかし喜んだことだろう。この一冊から読んでしまうのは何とももったいない話である。
TrackBack
TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15005/3176674
Listed below are links to weblogs that reference 『死を招く料理店(トラットリア)』 ベルンハルト・ヤウマン:

Comments