『水無川』 小杉健治
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著者:小杉健治
出版:集英社文庫
ISBN:4087477908
発行:2005年2月
価格:600円 (税込:630円)
採点:3.5点
[帯]
なぜ我が子を虐待してしまうのか?
家族とは?親子の絆とは?
渾身の社会派ミステリー。泣けます!書き下ろし
[あらすじ]
真壁義彦の担任した児童は親の虐待で死亡した。教職を辞し、悔恨の念を抱いて生きる日々。その中で真壁は子育てに自信をなくし、子どもを施設に預けている夏美と出会う。急速に親しくなる二人だったが、夏美は隣に住む野口という陰のある男に惹かれていく。
[感想]
児童虐待と家族愛という表裏一体のテーマを扱ったメッセージ性の強い作品である。
主人公の真壁は、自分の一生を変えた事件に対して向き合おうとする中で、夏美という女性と出会う。彼女はなぜ自分の子を虐待してしまうのか。施設に預けられた幼い娘・亜依と関わりを見つめながら、真壁は親自身の苦しみについて知るようになる。
ここまで読むと、物語は虐待事件へと展開するように思われる。だが、隣人の野口の登場によって謎が提示され、新たな方向へと進むのである。幼い少女はなぜ彼に懐くのか。彼にある陰の原因は何か。真壁は夏美を奪われるという心配から、野口について調べ始めるのだが、次第に真壁自身もその過去に興味を持ち始める。そして野口の輪郭が明らかになってくることで、主題は家族の絆へとシフトし、二つのテーマが合わさる結末へと向かっていくのだ。
ラストシーンは考えさせられる。解説にある通り、考えられる結末は二つ。読者はどちらを期待しながら読むのだろう。おそらくどこまで救いがあるか、それを考え秤にかけるのだろう。しかし、どちらを選んでもすべてが救われるとは思えない。痛みと苦しみは消えるはずもない。家族関係が希薄になり、痛ましい事件が現実に起こる中、あえてこの物語にこうした結末を選んだのはなぜか。作者はそれほどまでに家族の絆は強くあるべきだと伝えたかったのではないか。
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