『ユージニア』 恩田陸
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著者:恩田陸
出版:角川書店
ISBN:404873573X
発行:2005年 02月
価格:1,700円 (税込:1,785円)
採点:4.0点
[帯]
誰が世界を手にしたの?
遠い夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。
知らなければならない。あの詩の意味を。あの夏のすべてを。
[あらすじ]
ある夏の一日、懐かしい街を歩きながら彼女は語る。子どもの頃にここで起きた事件を。大学生の頃、卒論代わりに調べたあの事件を。
大人と子ども、17人が犠牲となった。米寿の祝いの席で振る舞われた飲み物に毒が入っていたのだ。盲目の少女は生き残り、容疑者は死亡した。だが本当は何があったのか。なぜそれほどの事件が起きなければならなかったのか――。真実の扉が少しだけ開こうとしている。
[感想]
霧がかかったようにぼやけた表紙、大きさのまちまちな頁、わずかに斜めになった印刷。不思議な装丁のこの本は、インタビュー、回想、独白で構成されている。
事件当時、十年後の取材時、さらに時を経た現在と三つの時間が作品に流れる。また、視点も各章ごとに変わり、事件関係者だけでなく当時の警察官や、取材に同行した青年など複数の目でその日の出来事が語られてゆく。
事件は関わった人々の人生に少なからぬ影響を与える。一つ一つは小さなエピソードだが、それらが合わさることで、波紋がどのように広がっていったのかを、読者はその目で確認する。なるほどそれぞれがこうした気持ちで向き合ってきたのかと、その重さに心を打たれるのだ。時が流れて記憶は薄れても、人の心の中で事件が風化することはない。それぞれの生き方に応じたフィルターを通して回想されるのである。読み解く楽しさを味わうと同時に、その奥行きの描き方に感心させられる。
ところが、盲目の少女・緋紗子の心の中だけは、どこまで読んでも掴むことができない。これほど背景が精細に描かれていながら、中心となる絵は輪郭すら判然としないまま据え置かれているのである。それだけに、なおのこと真実を知りたくなるのだ。いったい何が起きたのかと。彼女の心の中が見えたと思える時もある。だが、次の瞬間にはすべてが覆い隠され、読者は放り出されたような気分を味わうことになる。そして、決して分かることはできないのだと思い知らされるのだ。心のやりどころのない作品だが、誰かと語り合いたい気持ちにさせられる。
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Comments
ともさん、こんにちは。
私のエントリーへコメントとTBを有難うございました。
初めましてでしたのに、ご挨拶が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。
ともさんのような有名サイトの方へTBは失礼かと思ったのですが、たくさんの方とこの作品について語りたいと思ったものですから、TBさせていただきました。すみません。
動機が書かれた終章の「紅い花、白い花」ですが、やはり何度読んでも謎です。傍点がある文章はいったいどんな意味を持っているのでしょうか。
何度も第一章に戻って意味を確認したり、それからまた問題の第三章を読んだりと、忙しいです。まったく頭の中がぐるぐるしてきます。
本当に、真相は闇の中ですね。
では、今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by: でこぽん | 2005.02.20 at 06:29 PM
でこぽんさん、こんにちは。
コメントをありがとうございました。
TB嬉しかったですよ。まだここを初めて1か月くらいですので、トラックバックというものをあまりいただいたことがないのです。「TB」と書くのだということも、でこぽんさんのところで分かったくらいです。
感想を読ませていただき、その通りだなあと感じました。いろいろと考えさせられる作品ですね。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
Posted by: とも | 2005.02.21 at 05:28 AM
はじめまして。
ちょくちょく寄らせて頂いています。ちょろいもと申します。
書き込みはちょっと緊張しますが…(^-^;)。
『ユージニア』、不安な空気を愉しみました。恩田陸のひとつの到達点、のような気がします。
ともさんが「緋紗子の心だけは掴むことができない」と書かれていましたが、わたしも読みながらこの部分で東野圭吾の『白夜行』を連想しました。
TBさせていただきますね。
どうぞよろしくお願いいたします♪
Posted by: ちょろいも | 2005.03.01 at 10:40 AM