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2005.02.28

『ダ・ヴィンチ・レガシー』 ルイス・パーデュー

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著者:ルイス・パーデュー /中村有希
出版:集英社文庫
ISBN:4087604829
発行:2005年 02月
価格:781円 (税込:820円)
採点:3.0点

[帯]
 あのベストセラーをしのぐ興奮!
 万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ
 ――彼は、恐怖という名の“遺産”を遺した。
 謎解きとアクションが導く衝撃のクライマックス!
 '80年代に書かれた歴史ミステリーの傑作がいま!

[あらすじ]
 石油会社に勤務するヴァンスは採掘調査に携わる傍ら、趣味でレオナルド・ダ・ヴィンチの研究を続けていた。偶然にも貴重な手記を見る機会を得た彼は、その中に失われたページがあることに気づく。だが、関わった研究者は次々と不慮の死を遂げ、ヴァンスの恩師もまた犠牲となってしまう。犯人を追うヴァンスは、手がかりを求めて旧知の学者を訪れるのだが、危険はヴァンス自身にも迫っていた。

[感想]
 1983年に発表されたものを改稿し、2004年に再度刊行された作品。ミステリといっても謎解きが中心ではなく、ダ・ヴィンチの手記の失われたページを巡る痛快なアクションが売りの冒険小説である。

 主人公は石油会社の御曹司。アマチュアのダ・ヴィンチ研究家でもあり、機知に富み、体力にも恵まれた人物である。そして彼と行動を共にするのが記者のスーザン。こちらもまた誰もが振り返るような美女で、銃の腕前はなぜか超一流。まさに絵に描いたようなヒーロー、ヒロインの二人が謎の集団と戦うのだが、銃撃、カーチェイス、古城への侵入とどこをとってもスパイ映画さながらの大活躍。繰り返し命を狙われながら、危機を間一髪でくぐり抜けるところはそのまま007である。

 敵側もスケールが大きく、数百年の歴史を持つ教団に世界に暗躍する秘密結社と豪華なのだが、最強ペアと比較すると今ひとつ迫力に欠ける面は否めない。ベールに包まれている間はよいのだが、秘密が秘密でなくなることで怖さも半減してしまう。

 作品の改稿が2004年ということで、表計算ソフトのエクセルや、貿易センタービルのテロといった言葉が時折登場するのだが、作品を読んでみるどうも違和感がある。無理に最近のトピックを挿入する必要はなかったのではないか。と思っていたら、翻訳を担当された中村有希さんのページに、その苦労話が出ている。なるほどこれは大変な作業であったに違いない。ダ・ヴィンチの謎について過度の期待は禁物、少々大味だが、もしこんなことがあったらと歴史のロマンを感じながら気軽に楽しむにはよい。

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2005.02.27

モモちゃんがない

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 娘二人と一緒に夕方のお買い物。明日のパンを買おうと思ったのですが、また書店に寄ってしまいました。
 娘2号が探していたのは『小さいモモちゃん』のシリーズ3冊目、『モモちゃんとアカネちゃん』でした。でも、置いていないのです。というよりもシリーズが一冊もありません。ハードカバーだけでなく、青い鳥文庫の方もないのです。児童書のコーナーは郊外の書店にしては広いのに、ちょっと残念でした。こういうよい本は、いつでも置いてほしいです。

 仕方なく買ったのが柊あおいの『耳をすませば』。娘1号の方はいぬいとみこの『北極のムーシカミーシカ』です。

 見つけたミステリの新刊を一冊。書店には行ってみるものです。

『死を招く料理店』 ベルンハルト・ヤウマン 扶桑社ミステリー 950円

 ドイツ推理作家クラブ賞(グラウザー賞)の受賞作。料理店でミステリを書く作家が、現実に殺人事件に巻き込まれるという物語。解説を見るとこの作家、世界各国の首都を舞台に、五感をテーマにしたミステリを書いているようです。それで今回の作品が「味覚」。ドイツ版の山田正紀、浅暮三文かと思ってしまいますね。

 おまけに「モモちゃん」の人形がついた本を紹介します。かわいいですよ。
『ちいさいモモちゃん にんぎょうえほん』 松谷みよ子 講談社 1,575円

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新刊ミステリ 店頭確認

 週末の買い物で寄ったスーパーの中で、論創海外ミステリの新刊3冊を見つけてしまいました。まだ棚に並べる前で、ワゴンに入っていたのですが、まとめて抜いてレジに持って行きました。というわけで、3冊を並べてどれから読もうかと考えているところです。

『死の会計』 エマ・レイスン 論創海外ミステリ 2,100円
『裁かれる花園』 ジョセフィン・ティ 論創海外ミステリ 2,100円
『忌まわしき絆』 レスリ・パーネル・デーヴィス 論創海外ミステリ 1,890円

 『死の会計』はCWAシルヴァーダガー賞受賞作。『裁かれる花園』は学園を舞台にしたサスペンス。『忌まわしき絆』は「漆黒のホラー・サスペンス」ということで、これがいちばん怪しげですね。
 この他、いくつか出ていますのでお知らせします。

『写本室(スクリプトリウム)の迷宮』 後藤均 創元推理文庫 693円
『バッキンガム宮殿の殺人』 C.C.ベニスン ハヤカワ・ミステリ文庫 903円
『猫は銀幕にデビューする』 リリアン・J.ブラウン ハヤカワ・ミステリ文庫 693円
『幻想と怪奇 ポオ蒐集家』 仁賀克雄・編 ハヤカワ文庫NV 777円

 『写本室の迷宮』は第12回鮎川哲也賞受賞作。ハードカバーの刊行時に、東京創元社さんから送っていただきました。その節はお世話になりました。最後まで読み終えても、まだ謎が幾つか残るのです。続編ができたらよいのですが。文庫、もちろん買います。
 『バッキンガム宮殿の殺人』はエリザベス女王のメイドになった主人公が活躍するミステリです。軽快で、読みやすい作品ですよ。以前、ミステリアス・プレス文庫で出ていたものです。
 『幻想と怪奇』は長い間品切れで、探している人もたくさんいたようです。店頭に並んでいるうちに、購入されることをおすすめします。

 おまけですが、ベルガリアード物語が復刊されました。1988年に第1巻が出たファンタジーで、『指輪物語』がお好きな方ならば楽しめるでしょう。表紙が今風になって、新しいファンができそうです。ミステリではありませんが、良質のエンターテインメントですよ。

『予言の守護者』 デイヴィッド・エディングス ハヤカワ文庫FT 861円

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2005.02.26

『羊の秘』 霞流一

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著者:霞流一
出版:祥伝社(Non novel)
ISBN:4396207921
発行:2005年 02月
価格:876円 (税込:920円)
採点:3.5点

[帯]
 装飾された死体+雪上の殺人+ガラスの密室!
 「これが本格ミステリ“消去法の美学”だ」
 ミステリベスト2冠の
 法月綸太郎氏も驚倒!

[あらすじ]
 古道具屋の露沢が訪れた土蔵には、奇妙な死体があった。全身紙に覆われ、口には金属の棒。現場の三つの古時計は、それぞれ1時、2時、3時を示していた。そして再び起きる奇妙な事件。被害者はみな夢の表現サークルの関係者だった。

[感想]
 都市伝説の不思議を背景に展開する哀しい物語。トリック満載で、まさにミステリマニア向けの作品である。

 一作に一つの動物ネタを充てる作者が今回選んだのは羊。それがアイテムに関連するだけでなく、動機や推理の過程といったさまざまなレベルで作品に織り込まれている点は見事。しかし、何よりも嬉しいのはどこまでもトリックと謎解きにこだわる姿勢である。

 ミイラのように巻かれた被害者、ガラスの密室で火の玉となった死体など、奇怪な謎を提示し、蘊蓄を傾けながら驚くべき真相の種明かしをする。それは無理というとんでもないトリックも、ここまでやってくれれば大満足。得られた手がかりから容疑者を一人ずつ除外していくという、ミステリ好きにはたまらない大団円も用意されている。

 また、登場人物の会話の軽快さと事件の底流にある痛ましさ、この二つのギャップが不思議な味わいとなり、次第に作品の色合いが変わってくるところも興味深い。やるせない思いが残る結びもよい。

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2005.02.25

新刊ミステリ 店頭確認

『続巷説百物語』 京極夏彦 角川文庫 900円
『新・世界の七不思議』 鯨統一郎 創元推理文庫 735円
『黒い天使』 コ-ネル・ウ-ルリッチ ハヤカワ・ミステリ文庫 798円

『続巷説百物語』は又市一味が請け負う闇の仕事を描いた時代ミステリ。シリーズの第2作で、これに続く『後巷説百物語』は直木賞を受賞しています。解説は恩田陸。大極宮通信の12号のリーフレットが入っていますよ。

 『新・世界の七不思議』は『邪馬台国はどこですか?』のキャラクターが世界の謎に挑むという楽しい作品。東京創元社の雑誌「ミステリーズ!」に掲載された短篇をまとめたものです。

『黒い天使』はウールリッチの名作。『黒衣の花嫁』、『黒のカーテン』、『黒いアリバイ』など「黒」をタイトルに冠した作品の一つです。シリーズというわけではなく、単発の作品なので、今回新訳された『黒い天使』から手に取ってみるとよいでしょう。

 本当はもっと新刊が出ているのですが、まだ近所の書店に入荷していないので、とりあえず3冊紹介しました。どれも「買い」ですよ。

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2005.02.24

書店に行こう!キャンペーン

 昨日の読売新聞の夕刊には、紙面の各所に広告が出ていました。

 小さい頃、書店は夢や宝物がいっぱい詰まった魔法のお店でした。
 何度か足を運ぶうちに、よく行く店の棚を覚えて、そこがお気に入りの場所になりました。一番下にはパディントン、その上の棚にはドリトル先生、怪人二十面相やルパンのシリーズもその隣に並んでいました。今日はこの棚、明日はあの棚。立ち読みはいけないと子ども心に思っていたので、何冊かを出したり入れたり、そっと手にとって選んでいました。

 並んだ中から一冊を引き出すときのあのわくわくする気持ち。「ドリトル先生」は箱に入っていて、レジに持って行くと本を半分だけ引き出して、中の紙をお店の人が抜きます。紙袋に入れてセロハンテープを貼り、手渡してくれる瞬間が嬉しかったですね。「ありがとうございました!」という声で魔法が解けて、本を抱えながら店を飛び出しました。
 小さな書店はわたしの近所でも減ってきています。本を買うというあの楽しい時間は、今の子どもたちにも味わってほしいと思います。

 昨日は、朝から校門で本を持って歩いている女の子に会いました。読んでいたのは『いちご』。先週教室に持ってきたのですが、その子が「読んだらもう止まらなくなりました。」と言ってくれたのが嬉しかったです。
「テレパシー少女」の新刊が出ている、と教えてくれたのは別の子でした。あの本屋さんの、あの棚の下にこうして置いてあった、と一生懸命に説明してくれます。この子も本が好きになってくれたのだと、にこにこしながら聞いていました。

 本を手にする喜びをたくさん伝えて、未来のよい読者を育てたい、改めてそんな思いを持ちました。


書店に行こう!キャンペーン
『いちご(1)FromIchigo』 倉橋燿子 講談社青い鳥文庫 609円
『ゴースト館の謎 テレパシー少女「蘭」事件ノート7』 あさのあつこ 講談社青い鳥文庫 651円

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2005.02.23

みすべす JOYに登録

JOYからメールをいただきました。

JOY へようこそ!

登録された内容は「新着情報」で確認できます。
http://joyjoy.com/new/toc.html

登録された分類は
「本・雑誌」
http://joyjoy.com/category/book.html
です。
Hotマークをつけました!
すばらしいページを登録していただき感謝します!

 というわけで、「JOYのおすすめ新着」で紹介していただきました。登録完了のメールも少しくだけた感じでおもしろいです。でも、どう見てもHotマークではないのですが……。これはRead me!のマークですね。
 Read me!に登録しているのは、旧みすべすの方で、こちらのページにはリンクがありません。ですから、JOYの登録担当の方は一つ一つのサイトを確認しているということになります。これはたいへんな時間と手間のかかることですね。びっくりしました。
「本・雑誌」の中では、「ミステリ感想文」というサブ分類に入っています。すぐ下に、「ミステリ書評」の分類があるのもちょっとおもしろいです。これほど細かい分け方は初めてです。


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ペプシを買うのだが・・・(BlogPet)

きょうともの、エントリにblogしなかったよ。
しかしここでblogしたかもー。
しかしともでblogしたかったみたい。
しかしともはblogするはずだったみたい。


*このエントリは、BlogPetの「わとそん」が書きました。

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『シシリーは消えた』 アントニイ・バークリー

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著者: アントニイ・バークリー /森英俊
出版:原書房(ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
ISBN:4562038713
発行:2005年 02月
価格:2,400円 (税込:2,520円)
採点:4.0点

[帯]
 黄金時代のまさに〝幻の逸品〟
 著者の死後発掘された
 ロマンスあふれる本格推理!
 「ひとを消すことができる、とびっきりの呪文があるんだ」
 余興に始めた降霊会のさなか、若い女性がほんとうに〝消えて〟しまう。
 やがてある不可解な事実が浮かび上がって二転三転……。

[あらすじ]
 財産を使い果たして従僕の仕事に就くことになった青年・スティーヴン・マンローは、勤め先の屋敷で事件に遭遇する。屋敷の女主人の姪・シシリーが降霊会の最中に突然部屋から消えてしまったのだ。スティーヴンは招待客の一人で元恋人・ポーリーンとともに消えたシシリーを探し始めるのだが、事件はさらに複雑な様相を呈してくるのだった。

[感想]
 バークリーの作品を読むたびに思うのは、人物の描き方が実に好ましいということである。名探偵ロジャー・シェリンガムはもちろん、『第二の銃声』の語り手といい、この『シシリーが消えた』のスティーヴンといい、読者にいかに好感を持たせるかという点で、バークリーの筆力は際だっている。加えてテンポよく巧みなストーリー展開は、書かれたのが1927年という遙か昔であっても今なお読者を引き込み、楽しませてくれる。

 まず、主役のスティーヴンには、貴族から従僕へという少々気の毒でユーモラスな設定をし、慣れない仕事での失敗で楽しませてくれる。続いて偶然招かれた魅力的な元恋人を登場させ、いくつかの障害を配置して二人の恋の成り行きに読者の興味を引きつける。そうこうしているうちに降霊会での人間消失、謎の手紙、殺人事件と謎は次々に提示され、読者はページを捲る手を休める暇もなくなってしまうのである。

 人間消失を始めとして個々の出来事を見たとき、トリックに関してはさほど奇抜なものはない。だが、構成が巧みであるため、それらが実際に事件として現れたときに、それぞれが謎めいて見えてしまうのだ。犯人の目論見と探偵の行動、そこに偶然の状況が重なって、不可解な事件が展開する。驚くような結末はないが、この複雑な事件がすっきりと解決されるエンディングは読んでいて気持ちのよいものである。

 『シシリーが消えた』がどれほど貴重な作品であるか、没後の発見や現存部数の少なさなどその詳細は解説に書かれているが、単に珍しいだけでなく、読んで楽しめる作品であることが嬉しい。海外ミステリや、古典と呼ばれる作品にふれたことのない方にもこれならば十分楽しんでいただけるだろう。

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2005.02.22

読書アドバイザー

 今日の読売新聞の夕刊に読書アドバイザーの方の記事が出ていました。わたしはこの資格についてよく知らないので、ネットを検索してみました。

 読書アドバイザーとは、出版文化産業振興財団(JPIC)が認定する民間資格だそうです。その目的は三つ。

・読書を通した生涯学習の新たな分野を開拓する
・読書の楽しみを研究し読書推進活動を実践する
・読書を通して自己表現する活動の場を創造する

 これらをねらいとして、養成講座が開かれているそうです。資格を得るには講義と通信教育、ミーティングなどを約8か月受けます。昨年度のスケジュールを見てみると、ブックトークのように直接読者とふれあうことだけでなく、出版の仕組みや、検索の仕方など読書について幅広く扱っているようで、興味深い内容です。わたしは司書教諭の資格は持っているのですが、講座の内容はだいぶ違いますね。

 時間が合えば参加してみたいとも思うのですが、受講費用が少々高めで68,000円。興味のある方は、こちらをご覧ください。


出版文化産業振興財団


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ライトノベルという言葉

 仕事で作った書類の中に、「ライトノベル」という言葉を入れたら、わかりにくいので変えるようにという指示を受けました。当たり前のように使っていたので、少し驚きましたが、考えてみればこの言葉が出てきたのはここ数年のことのように思います。本の情報にあまりふれない方にとっては、意味の分からない言葉かもしれません。

「ライトノベル」という言葉はどの程度認知されているのでしょう。試しにGoogleで調べると 212,000件のヒット。ずいぶん多く感じられますが、ネット上ではほぼリアルタイムで言葉が普及しますから、これだけで広く知られているとは言えません。辞書で引いてみると、「広辞苑第五版」にはありません。ネット辞書の「大辞林」にもありませんが、三省堂提供「デイリー 新語辞典」ですと「10代の若者を主な読者層に想定した気軽に読める小説の総称。会話の多様やアニメ-タッチの挿絵などが特徴。」と出ていました。また、自宅の電子辞書で「現代用語の基礎知識2004」を調べたところ、こちらにはありませんが、今年度版を見ると、そちらには出ています。

ライトノベル完全読本の紹介文を見ると、

いま、“ライトノベル”と称される文庫小説に勢いがあります。
(ライトノベルとは、カバーや挿画にイラストを多用し、主として文庫の形で出版されている若年層を対象とした小説)。
「マリア様がみてる」(コバルト文庫)、「イリヤの空、UFOの夏」(電撃文庫)といった作品をはじめ、「ガンダム」や「鋼の錬金術師」などのアニメ、ゲームをノベライズ化した作品も人気を得ています。

とあります。ここでもライトノベルという言葉に対して説明を入れていますから、やはり、まだ新しい言葉なのですね。本が好きか、ある年齢層の範囲の方にしか通じないのかもしれません。しかし、最近の出版の状況から考えると、ジャンルとしては確立しているように感じます。分類する上で名前は必要ですね。早く言葉が認知されるとよいのですが。

ライトノベルに関する本
「ライトノベル完全読本」 日経BP社 2004年 08月 1000円
「このライトノベルがすごい!(2005)」『このミステリーがすごい!』編集部 宝島社 2004年 12月 725円
「ライトノベル・めった斬り!」 大森望/三村美衣 太田出版 2004年 12月 1,554円
「ライトノベル完全読本(vol.2)」日経キャラクターズ!編集部 日経BP社 2005年 01月 780円
「ライトノベルデータブック 作家&シリーズ/少年系」 榎本秋 雑草社 2005年 02月 1,365円

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2005.02.21

第25回横溝正史ミステリ大賞決定

第25回横溝正史ミステリ大賞は、伊岡瞬さんの『約束』に決定したそうです。おめでとうございます。
公式ページはこちら

ちなみに、過去の受賞作品は下のようになっています。
『この子の七つのお祝いに』、久しぶりにこのタイトルを見ました。岸田今日子主演で映画化もされましたね。とても懐かしいです。

第1回(1981年) 大賞『この子の七つのお祝いに』斎藤 澪
第2回(1982年) 大賞『殺人狂時代ユリエ』阿久 悠
          佳作『メービウスの帯』芳岡道太
第3回(1983年) 大賞『脱獄情死行』平 龍生
          佳作『篝り火の陰に』速水拓三
第4回(1984年) 大賞 受賞作なし
第5回(1985年) 大賞『見返り美人を消せ』石井竜生/井原まなみ
          佳作『四十年目の復讐』中川英一
          佳作『画狂人ラプソディ』森雅裕
第6回(1986年) 大賞 受賞作なし
第7回(1987年) 大賞『時のアラベスク』服部まゆみ
          佳作『鉄条網を越えてきた女』浦山 翔
第8回(1988年) 大賞 受賞作なし
第9回(1989年) 大賞『消された航跡』阿部 智
          佳作『真実の合奏』姉小路祐
第10回(1990年)大賞 受賞作なし
          優秀作『世紀末ロンドン・ラプソディ』水城嶺子
第11回(1991年)大賞『動く不動産』姉小路祐
第12回(1992年)大賞『レプリカ』羽場博行
             『恋文』松木 麗
          特別賞『殺人の駒音』亜木冬彦
第13回(1993年)大賞 受賞作なし
          優秀作『灰姫 鏡の国のスパイ』打海文三
          優秀作『キメラ暗殺計画』小野博通
第14回(1994年)大賞『ヴィオロンのため息の-高原のDデイ-』五十嵐均
          佳作『おなじ墓のムジナ』霞 流一
第15回(1995年)大賞『RIKO-女神の永遠-』柴田よしき
          佳作『盟約の砦』藤村耕造
第16回(1996年)大賞 受賞作なし
          優秀作『ノーペイン ノーゲイン』坂本善三郎
          佳作『夏色の軌跡』西浦一輝
第17回(1997年)大賞 受賞作なし
          佳作『クラッカー』建倉圭介
第18回(1998年)大賞『直線の死角』山田宗樹
          佳作『思案せり我が暗号』尾崎諒馬
          奨励賞『稜線にキスゲは咲いたか』三王子京輔
第19回(1999年)大賞『T.R.Y.』井上尚登
          佳作『フラッシュ・オーバー』樋口京輔
          奨励賞『ヴィクティム』小笠原あむ
第20回(2000年)大賞『DZ ディーズィー』小笠原慧
             『葬列』小川勝己
第21回(2001年)大賞『長い腕』川崎草志
          優秀作『中空』鳥飼否宇
第22回(2002年)大賞『水の時計』初野晴
          テレビ東京賞『逃げ口上』滝本陽一郎
第23回(2003年)大賞 受賞作なし
第24回(2004年)大賞『風の歌、星の口笛』村崎友
          優秀賞・テレビ東京賞『みんな誰かを殺したい』射逆裕二


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「ALL ABOUT 大沢在昌」

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大沢在昌全面協力
別冊宝島
出版:宝島社
ISBN:4796644989
発行: 2005年 03月
価格:1,300円 (税込:1,365円)

 宝島社から、「ALL ABOUT 大沢在昌」という本が出ました。
 佐久間公、新宿鮫、アルバイト探偵といったシリーズものを始め、これまでに出版されたすべての作品についての解説と、スペシャルインタビュー、単行本未収録作品の「レスリーへの伝言」を収めたたいへん贅沢な一冊です。書影がモノクロなのは残念ですが、主要キャラクターの生い立ちや人物相関図があるのは嬉しいですね。

 関口苑生のエッセイ「日本で「ハードボイルド作家」と呼べるただひとりの人物」には、河野典生『殺意という名の家畜』、結城昌治『暗い落日』、生島治郎『追いつめる』など国内ハードボイルドの流れと、そこに登場した大沢在昌の位置と方向が分かりやすく紹介されています。


大沢在昌公式サイト 「大極宮」
『殺意という名の家畜』 河野典生
『暗い落日』 結城昌治 品切れ
『追いつめる』 生島治郎 品切れ
 よい作品が品切れとなっているのは残念です。

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『オルファクトグラム』 井上夢人

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著者:井上夢人
出版:講談社文庫
ISBN:4062749858
発行: 2005年 02月
価格:819円 (税込:860円)(上巻)733円 (税込:770円)(下巻)

[帯]
 ’01年度「このミス」4位の名作がついに!(上巻)
 究極の嗅覚の世界 愛と感動の大長編(下巻)

[あらすじ]
 片桐稔は姉の家を訪れたとき、何者かに背後から襲われた。病院で意識を取りもどした彼は、そのとき姉が殺害されていたことを知らされ、同時に頭部の怪我が原因で自分が驚くべき嗅覚を身に付けたことに気づく。この嗅覚が犯人を追い詰めるために役立つのだろうか…。しかし、殺人者は次々と犯行を重ねていくのだった。

[感想]
 わたしたちは匂いの世界のことをほとんど何も知らない。だが、もしこのように見えたらどんなに素敵だろうと心から感じせさてくれるこの作品は実に美しい。

 主人公が自分の変化に気づき、匂いの構造を調べたり、CGで描いたりするところから、わたしたちは彼の喜びを感じ取ることができる。今まで見ることのできなかった世界を調べてみたい、そして他の人にも伝えたいという気持がストレートに読者の心に届いてくるのである。主人公はおそらく生まれたての赤ん坊が全身で刺激を受け止めているのと同じような興奮を感じているのだろう。これは事件を追う緊迫感やスリル・サスペンスとは違う。新しいものを知りたい、感じたいという、人間が生まれながらに持っている願いである。これが読みながら満たされていくのはどんなに嬉しいことか。

 実際には赤ん坊は刺激から学習をしていくときの興奮をわたしたちに伝えることはできない。だが、主人公が匂いの世界を知るのと同じような感動を理解するのに近い場面は体験することができる。それは、文字の存在を知り、読むことができたときの幼児の姿からである。
 文字を覚えたばかりの娘を連れてドライブに出かけた。娘は窓から見える「そば処」の文字を見て、「そ…ば…」と読み、たどたどしく何度か繰り返してからようやく「そば」のことだと気づいた。そして、大きな声で「おそば屋さん、あった!」とわたしに伝えてくれたのである。「うどん」の看板も「ごみ」の文字も、娘にとっては初めて文字として意識されたものである。次々に声に出し、読んで意味がわかることの喜び、文字というものが物事に対応し、言葉と同じものなのだと知る喜びを全身でわたしに伝えてきた。この喜びこそ新しい世界の存在に気づいた興奮と同じものではないだろうか。

 文字だけではないのだろう。本当は目の前に当たり前に見えているものすべてに、深い意味と価値があるはずである。だが、わたしたちは成長するうちにそうしたことを忘れていってしまう。驚きに満ちた世界は、次第につまらぬものに見えてきてしまう。大人になることで失ったものは計り知れない。

 作品の結末がよい。読み終えたとき、わたしたちは誰もが主人公と同じ気持ちを体験してきたのだと改めて感じることができる。そしてもう一度、世界が新鮮に見えていたときのことを思い出すことができる。匂いの世界を知るのは主人公ただひとりだが、彼は決して孤独ではない。自分と同じように、新しい世界を知る喜びを分かち合うことができるのだから。この喜びに満ちた作品を読める幸せを、一人でも多くの人と共有したい。

 2001年度このミステリーがすごい4位。(旧みすべすより 文庫化により再掲)

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2005.02.20

新刊ミステリ 店頭確認

『水無川』 小杉健治 集英社文庫 630円
『ランチタイム・ブルー』 永井するみ 集英社文庫 580円
『このペン貸します ジェイン・オースティンの事件簿』 ローラ・レバイン 集英社文庫 650円
『ダ・ヴィンチ・レガシー』 ルイス・パーデュー 中村有希 820円
『黄色い部屋の謎』 ガストン・ルルー 嶋中文庫 840円
『殺人展示室』 P.D.ジェイムズ 早川書房(ポケミス) 1,890円
『名探偵カッレくん』 リンドグレーン 岩波少年文庫 714円
『深追い』 横山秀夫 Joy novels 860円
『モップの精は深夜に現れる』 近藤史恵 Joy novels 860円
「ミステリ-ズ! Vol.09」 東京創元社 1,260円
『ゴシック名訳集成暴夜(アラビア)幻想譚』 ウィリアム・ベックフォ-ド/東雅夫 学習研究社 1,785円
『サウスポーキラー』 水原秀策 宝島社 1,680円
『果てしなき渇き』 深町秋生 宝島社 1,680円
『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる 新潮社 1,680円


『水無川』は書き下ろし。児童虐待と家族愛という表裏一体のテーマを取り上げた力作です。『ダ・ヴィンチ・レガシー』は1983年の作品ですが、本国で修正されて昨年再刊されたもの。
『黄色い部屋の謎』は嶋中文庫グレート・ミステリーズの第10巻。1961年の「世界推理名作全集」の一冊です。カバー折り返しには、第2期として刊行される作品が載っています。ガードナーの『ビロードの爪』やハルの『伯母殺人事件』が予定されています。
『名探偵カッレくん』は児童向けミステリの名作。岩波少年文庫の新版でようやく出ることになりました。
Joy novelsから二つご紹介。『深追い』は2002年の作品。『モップの精は深夜に現れる』は『天使はモップを持って』の続編。女性清掃員のキリコが日常の謎を解き明かします。
『ゴシック名訳集成』は店頭では確認できませんでした。入荷数が少ないかもしれません。
『サウスポー・キラー』と『果てしなき渇き』は「このミステリーがすごい!」大賞の受賞作。『九月が永遠に続けば』は第5回ホラーサスペンス大賞受賞作です。

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『水無川』 小杉健治

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著者:小杉健治
出版:集英社文庫
ISBN:4087477908
発行:2005年2月
価格:600円 (税込:630円)
採点:3.5点

[帯]
 なぜ我が子を虐待してしまうのか?
 家族とは?親子の絆とは?
 渾身の社会派ミステリー。泣けます!書き下ろし

[あらすじ]
 真壁義彦の担任した児童は親の虐待で死亡した。教職を辞し、悔恨の念を抱いて生きる日々。その中で真壁は子育てに自信をなくし、子どもを施設に預けている夏美と出会う。急速に親しくなる二人だったが、夏美は隣に住む野口という陰のある男に惹かれていく。

[感想]
 児童虐待と家族愛という表裏一体のテーマを扱ったメッセージ性の強い作品である。
 主人公の真壁は、自分の一生を変えた事件に対して向き合おうとする中で、夏美という女性と出会う。彼女はなぜ自分の子を虐待してしまうのか。施設に預けられた幼い娘・亜依と関わりを見つめながら、真壁は親自身の苦しみについて知るようになる。

 ここまで読むと、物語は虐待事件へと展開するように思われる。だが、隣人の野口の登場によって謎が提示され、新たな方向へと進むのである。幼い少女はなぜ彼に懐くのか。彼にある陰の原因は何か。真壁は夏美を奪われるという心配から、野口について調べ始めるのだが、次第に真壁自身もその過去に興味を持ち始める。そして野口の輪郭が明らかになってくることで、主題は家族の絆へとシフトし、二つのテーマが合わさる結末へと向かっていくのだ。

 ラストシーンは考えさせられる。解説にある通り、考えられる結末は二つ。読者はどちらを期待しながら読むのだろう。おそらくどこまで救いがあるか、それを考え秤にかけるのだろう。しかし、どちらを選んでもすべてが救われるとは思えない。痛みと苦しみは消えるはずもない。家族関係が希薄になり、痛ましい事件が現実に起こる中、あえてこの物語にこうした結末を選んだのはなぜか。作者はそれほどまでに家族の絆は強くあるべきだと伝えたかったのではないか。

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2005.02.19

『ウィスキー・サワーは殺しの香り』 J.A.コンラス

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著者:J.A.コンラス /木村博江
出版:文春文庫
ISBN:4167661918
発行:2005年 02月
価格:686円 (税込:720円)
採点:3.0点

[帯]
 ハードボイルドでコミカルなヒロインの登場
 女警部補ジャック・ダニエルズ

[あらすじ]
 コンビニエンス・ストアのごみ箱から若い女性の惨殺死体が発見された。切り刻まれた身体の傍らにはジンジャーブレッドマンと名乗る犯人のメッセージ。捜査を任されたジャクリーンは相棒のハーブとともに地道に手がかりを追うが、犯人の魔手は彼女にも伸びつつあった。

[感想]
 国内向けに翻訳された作品に限っての話だが、『羊たちの沈黙』の映画化から一時期はやった猟奇殺人ものもだいぶ数が落ち着いてきている。近年は、犯人の異常さを強調するだけでなく、捜査する側に工夫を加えたり、設定に奇抜な発想を取り入れたりと、これまでの作品とは違った魅力を加えようとする方向が見られるようになってきた。では、この『ウィスキーサワーは殺しの香り』はどうだろうか。

 主人公の女性警部補・ジャック・ダニエルズは合格点。タフで正義を愛するキャラクターとして十分印象的である。離婚歴があり、自分には仕事だけしか残されていないと気落ちしているが、不眠症に悩まされながらも着実に犯人を追いつめていくねばり強さには好感を持つことができる。また、相方となる大食漢の刑事がよい味を出している。その食べっぷりが豪快で、人の食べ残しの病院食まで平然とたいらげる。ベーグルやらピザやらどうということのないものも、幸せそうにお腹に入れてしまうのは読んでいて気持ちよいほど。さりげないサポートが実は頼りになる。だが、残念なことに犯人のジンジャーブレッドマンの方は異常さと狡猾さのバランスが一定していないという印象を受ける。展開に合わせるかようにキャラクターが変わってしまい、序盤の不気味さが最後まで持続しなかったところは惜しい。

 犯人側、警察側と両面から物語を進めていく展開はテンポがよく楽しめる。ユーモアに溢れているというほどではないが、少なくとも血なまぐさい事件とのバランスをとる程度の安定感も感じられる。ジャックを主人公とした次作『ブラディ・メアリー』も書き上がっているということなので、もう一作読んでみてもよいだろう。

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2005.02.18

『ユージニア』 恩田陸インタビュー

 ここ数日、「ユージニア」を検索してみすべすにいらっしゃる方が多いです。「禁断のユージニア」のページを作ったからでしょうね。
 あのページは、読みながら書いたメモですので、読みづらいところが多いと思います。意味のないところもあるのですが、読み返すときの役に立てば嬉しいです。自由にご活用ください。

 みすべす楽天に、『ユージニア』についてのインタビュー記事がありますので、そちらを紹介させていただきます。

 「25年前に起こった大量殺人事件の真相は?登場人物たちの「証言」に翻弄されるミステリアスな傑作小説!
 インタビューはこちら!

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2005.02.17

MYSCON6

 昨日から、ミステリ系の各サイトで紹介されているMYSCONですが、これはネット上のミステリ好きの人たちが、年に一度集まる会のことです。発音は「みすこん」ですが、片仮名で書くと誤解を招くおそれがあるので、アルファベットで表記することになっています。

 サイトに感想を書いたり、新しい本の紹介をしたり、掲示板でお互いに面白い本をすすめ合ったりと、普段インターネット上で交流をしている人たちが、実際に集まるとどうなるか。わたしも初めての参加の時には、行く前の不安がありました。でも、着いたら心配をしたことを忘れてしまうほどとても楽しい会でした。

 パソコンの画面でしか名前を見たことのない人が、目の前にいる、それは不思議な感覚です。イメージ通りの人、想像とは全く違う人、でも話してみるとみなさんよい方ばかりで、何より嬉しいのはいる人全員がミステリ好きだということ。互いに共通の話題があるから、あっという間に知り合いになれます。

「この本のここが好き」、「あの作者ならこの作品」などと、一晩中ミステリの話ができる楽しさ。これは言葉では言い表せません。わたしは身近にミステリ好きな人がいないものですから、MYSCONでは本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。また、話ができるだけでなく、作家の方のお話や、さまざまな紹介企画、読書会や古本のオークションなど様々なイベントがあり、好きなところに参加できるのも嬉しいことです。

 そして何よりMYSCONを支えるスタッフの方々がすばらしいのです。イベントの企画や司会、案内のメールや参加者がつける名札など、細かいところまで行き届いた配慮には、頭が下がります。スタッフのみなさん、ありがとうございます。どうぞお身体に気をつけてくださいね。

 今年のMYSCONも、きっとすばらしい会になるでしょう。もし、興味があるのでしたら、参加されてはいかがでしょうか。

MYSCON6のサイトへ

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『鏡姉妹の飛ぶ教室』 佐藤友哉

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著者:佐藤友哉
出版:講談社ノベルス
ISBN:4061824147
発行:2005年 02月
価格:970円 (税込:1019円)
採点:3.0点

[帯]
 これぞ、佐藤友哉。
 戦慄の〈鏡家サーガ〉最新作!
 あの『クリスマス・テロル』から三年。おかえりなさい、佐藤友哉!

[あらすじ]
 大地震で液状化した地盤は、青葉中学校を地底深く引きずり込んだ。生死を分ける一瞬を何とか生き残った鏡家の三女・佐奈は、妹を捜し地上へと脱出しようとする。だが、校内には「闘牛(トロ)」と呼ばれる怪物が徘徊し、それを狙うハンターとの間で壮絶な戦いが繰り広げられていた。

[感想]
 あふれ出す言葉と超人同士の激しい戦い。物語は書き出しからサバイバル・ストーリーである。

 『不思議の国のアリス』をモチーフにしたこの作品の中で、主人公・鏡佐奈の日常は非日常へと変貌を遂げる。考えられないような展開(ほとんどが災難)が次々と彼女に降りかかる。鏡家の兄妹といえば、これまでの作品でそれぞれ強烈な個性を持っていたが、佐奈は取り立てて特徴のない普通の中学生。その彼女が危機的状況の中で、どのように行動し、どのように変わっていくのかがテーマの一つ。

 最強を自負してマシンガン・トークを炸裂させる少年、「本気の本気」があれば人は何でもできると信じる少女、選ばれた者だけが勝者だと豪語する超一流のハンター。突然の非日常に影の薄かった少年はパニックを起こし、痛覚のない究極の身体を持つ怪物は痛みを知るために猟奇的な殺戮を続ける。目的のためにはどんな障害も排除する自己中心的な登場人物たちが、戦いの中で何を感じ、何を得ていくのか。個性的、というよりもそれぞれどこか壊れてしまっているのだが、そんな彼らが一つの目標を得て変容していく終盤の展開が興味深い。

 繰り返される言葉「本気の本気」は登場人物に向けられるだけでなく、作者自身に向けられたもののように思える。この熱さが、佐藤友哉ファンだけでなく新しい読者にも伝わることを期待したい。次作でもきっと、本気を見せて楽しませてくれるに違いないから。

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2005.02.16

仁木悦子の作品

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『探偵三影潤全集 白の巻』を見かけて、買ってしまいました。角川文庫や講談社文庫で出たものは当時買っていたのですが、きれいな装丁を見たら我慢できなくなったのです。

 仁木悦子は、第3回江戸川乱歩賞の受賞者です。この賞の第1回は中島河太郎の『探偵小説辞典』、第2回は早川書房のポケット・ミステリに贈られました。現在のように新人の作品を選出することになったのは、第3回からですから、仁木悦子は最初の受賞者といってもよいでしょう。そのときの作品が『猫は知っていた』です。仁木雄太郎と悦子の二人の兄妹が探偵役として登場し、下宿先の病院で起きた事件を解決します。このシリーズの長編は4つあるのですが、わたしのおすすめは『林の中の家』です。

 今回刊行された『探偵三影潤全集 白の巻』は、仁木兄妹シリーズとは雰囲気の違うハードボイルド調のミステリ。長編『冷えきった街』の他、「白い時間」、「白い部屋」を収録しています。

 出版芸術社では、仁木悦子の作品を何年かおきに少しずつまとめています。「仁木兄妹長編全集」、「仁木兄妹の探偵簿」、「子供たちの探偵簿」と、入手が難しくなった作品を読みやすく分類・配列して刊行しているのです。これはとてもありがたいことですね。わたしもそうですが、以前読んだことのある方には懐かしいでしょう。新しいミステリファンの方には、読んでおいて損のない作品ですから、おすすめしたいと思います。


『探偵三影潤全集 白の巻』 仁木悦子 出版芸術社 1,680円
このほか、仁木悦子の作品についてはこちらをどうぞ。

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新刊ミステリ 店頭確認

『終戦のローレライ(3)』 福井晴敏 講談社文庫 730円
『終戦のローレライ(4)』 福井晴敏 講談社文庫 730円
『殺人方程式(切断された死体の問題)』 綾辻行人 講談社文庫 660円
『オルファクトグラム(上)』 井上夢人 講談社文庫 860円
『オルファクトグラム(下)』 井上夢人 講談社文庫 770円
『転・送・密・室』 西澤保彦 講談社文庫 750円
『ショートショートの広場(16)』 阿刀田高編 講談社文庫 520円
『レッド・ライト(上)』 T.J.パーカー 講談社文庫 650円
『レッド・ライト(上)』 T.J.パーカー 講談社文庫 650円
『耽溺者(ジャンキー)』 G.ルッカ 講談社文庫 1,000円
『ビッグ・ボーナス』 ハセベバクシンオー 宝島社文庫 680円

『終戦のローレライ』は今月で4冊が揃い、完結します。映画化に合わせて手軽に読める文庫となりましたが、来月には文庫初のフィギア付き限定版(10000セット)も発売されます。残りは午後8時の時点で41個です。
『殺人方程式』はずいぶん前のものですが、パズラーとしてよくできた作品です。カッパ・ノベルスから光文社文庫になり、10年以上経って再文庫化されました。文庫版のためのあとがきを読むと、多少の手直しが入っているとあります。
『オルファクトグラム』は、嗅覚が異常に発達した主人公が活躍するミステリ。これはたいへんおもしろい作品ですので、未読の方はぜひどうぞ。「このミステリがすごい」他、各種ランキングで高い評価を得ています。
『レッド・ライト』は『ブルー・アワー』に続く警察小説シリーズの第2作です。作者は2002年度のMWA最優秀長編賞を『サイレント・ジョー』で受賞したT.J.パーカー。この作品もMWA賞の候補作となりました。
『ビッグ・ボーナス』は第2回「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞受賞作です。

 読書の方は、『鏡姉妹の飛ぶ教室』を読み終えたところです。本当に飛んでしまっていますね。強烈な作品でした。

 人気ブログランキングですが、今朝の段階で「読書」カテゴリの4位まで上がりました。みなさんのご協力のおかげです。どうもありがとうございます。たくさんの方に、ミステリの楽しさが伝えられるよう、細く長く続けていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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2005.02.15

『松浦純菜の静かな世界』 浦賀和宏

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著者:浦賀和宏
出版:講談社ノベルス
ISBN:4061824139
発行:2005年 02月
価格:880円 (税込:924円)
採点:3.0点

[帯]
「私には分かるよ。あなたの気持ちが。
 殺したい奴って、確かにいるもの」
 いま日本で最も戦闘的な作家の最新作。  


[あらすじ]
 暴漢に襲われ、重傷を負った純菜は、強盗の放った銃弾をかわした奇跡の男・八木剛士と出会う。二人は協力して行方不明となっている純菜の友人を探すこととなるが、町では女子高生を狙った殺人事件が連続して起きており、二人の身にも危険が迫るのだった。

[感想]
 心に癒せぬ傷を持つ男女が、事件を通して生きる力と自信を取り戻していく。
 浦賀和宏は前作『透明人間』でも、同様のテーマを扱っている。孤独な女性が閉鎖状況の研究所内で殺人事件に巻き込まれるというもので、いくつもの危機を脱した主人公が自分の生きる意味を見いだしていく姿が心を打つ作品であった。特に、タイトル通りの「透明人間」というSF的な要素とミステリの王道である密室トリックを融合させ、幻想的な結末に運ぶ展開は読み応えがあった。

 生きる力、自信へと物語を運ぶ牽引力を見るならば、『松浦純菜の静かな世界』よりも『透明人間』の方が勝っているだろう。純菜が必死になる理由がなかなか明らかにならないこと、剛士の妹に対する心情にもう一歩踏み込みがほしいことなど、惜しい部分はある。しかし、今回の作品は猟奇殺人鬼に都市伝説を絡めたもので、主人公の造型を含めて物語にさまざまな謎を織り込んでいるところはおもしろい。警察側の捜査は全く触れられていないが、純菜という少女を配置することで、否応なしに事件に巻き込まれていく状況を設定している。また、プロット自体は珍しいものではないが、一見不可解な事柄の一つ一つに筋道の通った決着がつけられているところもよい。犯人側の描写を加えるなど、テンポよく読ませる工夫もされており、気軽に楽しめる作品となっている。

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2005.02.14

『シシリーは消えた』を見つけた

 文春文庫の新刊を確認するために、帰りがけに書店に寄りました。すると、新刊のコーナーに『シシリーは消えた』が置いてあるではありませんか。原書房の「ヴィンテージ・ミステリ」シリーズで、アントニイ・バークリーの幻の作品です。毎日通ってみるものですね。

 解説を見ると、その幻の理由が詳しく説明されているのですが、この作品は別名義で書かれ、亡くなってから17年後にバークリーの作品だと判明したのだそうです。本そのものにドラマがありますね。こうした作品を手軽に読めるのですから、ミステリファンにとっては日本の出版状況はとてもありがたいものだと思います。できることなら、このブームがいつまでも続いてほしいものです。

 みすべすは、国内・海外、新旧のミステリを幅広く紹介しています。一人でも多くの方に、好みにあった作品を見つけていただき、ミステリファンを増やしていきたいと思っています。そうした気持ちで昨日から、ブログランキングというサイトに登録しています。昨日は150位くらい。おかげさまで今日は45位くらいまで上がってきました。下のリンクをクリックして、お力をお貸しいただければありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

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『シシリーは消えた』 アントニイ・バークリー 原書房 2,520円

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2005.02.13

『ユージニア』を楽しむ「禁断のユージニア」

というページを作ってしまいました。
恩田陸『ユージニア』を読み終えて、もう一度楽しめるページです。

情報や伏線を章ごとにまとめていますが、どう読み取るかは読者の自由です。
『ユージニア』を未読の方は、ご注意ください。

「禁断のユージニア」の扉を開く

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『ユージニア』 恩田陸

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著者:恩田陸
出版:角川書店
ISBN:404873573X
発行:2005年 02月
価格:1,700円 (税込:1,785円)
採点:4.0点

[帯]
 誰が世界を手にしたの?
 遠い夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。
 知らなければならない。あの詩の意味を。あの夏のすべてを。

[あらすじ]
 ある夏の一日、懐かしい街を歩きながら彼女は語る。子どもの頃にここで起きた事件を。大学生の頃、卒論代わりに調べたあの事件を。
 大人と子ども、17人が犠牲となった。米寿の祝いの席で振る舞われた飲み物に毒が入っていたのだ。盲目の少女は生き残り、容疑者は死亡した。だが本当は何があったのか。なぜそれほどの事件が起きなければならなかったのか――。真実の扉が少しだけ開こうとしている。

[感想]
霧がかかったようにぼやけた表紙、大きさのまちまちな頁、わずかに斜めになった印刷。不思議な装丁のこの本は、インタビュー、回想、独白で構成されている。
 事件当時、十年後の取材時、さらに時を経た現在と三つの時間が作品に流れる。また、視点も各章ごとに変わり、事件関係者だけでなく当時の警察官や、取材に同行した青年など複数の目でその日の出来事が語られてゆく。

 事件は関わった人々の人生に少なからぬ影響を与える。一つ一つは小さなエピソードだが、それらが合わさることで、波紋がどのように広がっていったのかを、読者はその目で確認する。なるほどそれぞれがこうした気持ちで向き合ってきたのかと、その重さに心を打たれるのだ。時が流れて記憶は薄れても、人の心の中で事件が風化することはない。それぞれの生き方に応じたフィルターを通して回想されるのである。読み解く楽しさを味わうと同時に、その奥行きの描き方に感心させられる。

 ところが、盲目の少女・緋紗子の心の中だけは、どこまで読んでも掴むことができない。これほど背景が精細に描かれていながら、中心となる絵は輪郭すら判然としないまま据え置かれているのである。それだけに、なおのこと真実を知りたくなるのだ。いったい何が起きたのかと。彼女の心の中が見えたと思える時もある。だが、次の瞬間にはすべてが覆い隠され、読者は放り出されたような気分を味わうことになる。そして、決して分かることはできないのだと思い知らされるのだ。心のやりどころのない作品だが、誰かと語り合いたい気持ちにさせられる。

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2005.02.11

新刊ミステリ 店頭確認+思いつき

【国内文庫】
『ベアハウス』 井上雅彦 光文社文庫 500円
 書き下ろしホラーです。
『帝都探偵物語7 水妖の青き唄を聴け』 赤城毅 光文社文庫 580円
 木暮十三郎の活躍を描く怪奇探偵小説シリーズです。

【国内新書】
『羊の秘』 霞流一 祥伝社ノン・ノベル 920円
 動物をテーマにトリッキーでアクロバティックな作品を提供してくれる霞流一の新作です。毎回楽しみで購入しているのですが、出版社や判型が毎回違うので、揃えるのがたいへんです。面白い作品が多いので、これまでのものが同じ出版社から文庫化されたらよいのですが。

【海外文庫】
『シティ・オブ・ボーンズ』 マイクル・コナリー ハヤカワ・ミステリ文庫 987円
 ハリウッド署刑事・ハリー・ボッシュを主人公にしたシリーズの8作目。1作目の『ナイト・ホークス』はMWA賞を受賞しています。
『悪党パーカー/電子の要塞』 リチャード・スターク ハヤカワ・ミステリ文庫 798円
 20年間の中断の後に再開された悪党パーカーの新シリーズ第4弾です。シリーズ全体としては20作目ということですが、現在入手できる作品は限られています。
『我輩はカモである』 ドナルド・E・ウェストレイク ハヤカワ・ミステリ文庫 819円
 先月『聖なる怪物』が話題となったウェストレイクの1967年の作品。MWA賞受賞作です。1995年に、ミステリアス・プレス文庫から刊行された作品の再文庫化。笑えるミステリです。
『ウィスキー・サワーは殺しの香り』 J.A.コンラス 文春文庫 720円
 ジャック(ジャクリーン)・ダニエルズという、呼ばれたちょっと恥ずかしい名前の女性警部補が猟奇殺人鬼を追います。警察側と犯人側とで交互に物語が展開していきます。

思いつき
 本を抱えて児童書のコーナーに寄ると、『ランプの精』という本が平積みになっていました。「スピルバーグが映画化権獲得」というコピーにつられて手に取ってみると、作者はP.B.カー。どこかで見たような気がして、裏表紙を見てみました。この人、フィリップ・カーだったのですね。新潮文庫から出ていた『偽りの街』、『砕かれた鍵』、『ベルリン・レクイエム』のベルリン三部作の作者です。奥付は昨年の12月だったので、完全に見逃していました。著者初の児童書ということで、興味のある方はどうぞ。

『ランプの精 イクナートンの冒険』 P.B.カー 集英社 1785円

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『月読』 太田忠司(BlogPet)

わとそんは、書房も出版しなかったよ。
わとそんは、講談社と4するつもりだった?
mysterybestは、

本の詳細ページへ著者:太田忠司出版:文藝春秋(本格ミステリ・マスターズ)

といってました。

*このエントリは、BlogPetの「わとそん」が書きました。

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『ユージニア』を読み終えて

 恩田陸の新刊です。わたしが買うハードカバーは文庫化されないと思われるものや、叢書だけなのですが、珍しく買ってしまいました。
 その理由は、装丁が凝っていたこと。書店で開いてみたら、最初の数ページのサイズが少しずつ違っていました。もしかしたらと思って、カバーの端を少しめくると、こちらにも秘密がありました。文庫化したときには同じようにはできないでしょうね。本文の印刷が曲がっているのも不思議です。

 読みながら、なぜか『白夜行』のようだと感じていました。17人が毒殺された事件と、生き残った盲目の少女。ラストまでたどり着いて、もう一度読み返していますが、よくわからないところがあります。誰が、何をしたのか。本当は何があったのか。これ、素直に読んでよいのでしょうか。

 一晩中こうして本のことを考えていたら、窓から朝の光が差し込んできました。気持ちのよい朝ですね。よい本にめぐり会えました。

『ユージニア』 恩田陸 角川書店 1785円

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2005.02.10

新刊ミステリ 店頭確認

『ネコソギラジカル(上)十三階段』 西尾維新 講談社ノベルス 1134円
『松浦純菜の静かな世界』 浦賀和宏 講談社ノベルス 924円
『「ギロチン城」殺人事件』 北山猛邦 講談社ノベルス 882円
『鏡姉妹の飛ぶ教室』 佐藤友哉 講談社ノベルス 1019円
『天岩屋戸の研究』 田中啓文 講談社ノベルス 924円
『伝奇城』 朝松健 えとう乱星編 光文社文庫 880円
『鬼の言葉』 江戸川乱歩 光文社文庫 980円

 講談社ノベルスから5冊。佐藤友哉は『クリスマス・テロル』から3年ぶりの新作になります。今月はメフィスト賞受賞作家の作品が多いですね。光文社文庫からは『伝奇城』。伝奇時代小説のアンソロジーで全編書き下ろしです。『鬼の言葉』は乱歩全集の25巻。「探偵小説十五年」、「随筆探偵小説」を収録しています。
 2軒回って購入しました。郊外の書店のため、光文社文庫はまだ入荷していない本があるようです。このほか、「月刊モエ MOE」の3月号を購入。こちらは「バムとケロ」の島田ゆか特集です。「絵本なスポット27軒」というカフェガイドもついています。

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2005.02.09

『ほうかご探偵隊』 倉知淳

kurachi01

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著者:倉知淳
出版:講談社(ミステリーランド)
ISBN:4062705745
発行年月: 2004年 11月
本体価格:2,000円 (税込:2,100円)
採点:5.0点

[帯(シール)]
 かつて子どもだったあなたと少年少女のための――
 ミステリーランド第六回配本
 小学五年生経験者必読!

[あらすじ]
 クラスを揺るがす連続消失事件。その四番目の被害者に、僕はなってしまった。なくなったのはリコーダー。それも真ん中の棒状のところだけ。飼育小屋のニワトリや、壁に貼ってあった絵など、いったい誰が、何のためにとったのか。僕は、江戸川乱歩好きの龍之介君たちと一緒に、ほうかご探偵隊を結成した。

[感想]
 不可解な事件、ミッシングリンク、密閉された室内からの消失、暗号、どんでん返し、犯人との対決、少年探偵団、他の作品とつながるちょっとした仕掛け。児童向けの小説であるにもかかわらず、ミステリの素材をふんだんに盛り込んだ、贅沢な作品である。

 登場人物は小学生と学校に関わる人のみ。事件も絵やリコーダー、ニワトリがいなくなるというどこかのんびりとしたもので、作品全体の雰囲気も温かく、懐かしい印象を受ける。何か所か衝撃的な場面も準備されているが、その後の展開には読み手となる子どもたちを意識した気配りが見られ、安心して与えることのできる作品となっている。これは同時に、ミステリ好きな大人が読んでもうならされるところで、鮮やかな逆転劇が気持ちよい。

 ミステリーランドのシリーズは、これまでに13作品が刊行されているが、これほどソフトで、しかもトリックとロジックにこだわった作品はない。子どもたちにミステリの楽しさを伝えるという点で、最も成功している作品である。

 しかし、これを読んで子どもたちに探偵隊などを作られてしまっては、小学校の担任の先生は困るのではないだろうか。あんなことがあったり、こんなこともあったり、きっと困るに違いない。クラスでこんなことをはやらせてしまうわけにはいかない……のだが、読ませたい。何としても読ませたい。毎日教室で読み聞かせをしたい。小学校教師、五年担任の素直な気持ちである。

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2005.02.08

『月読』 太田忠司

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著者:太田忠司
出版:文藝春秋(本格ミステリ・マスターズ
ISBN:4163236902
発行:2005年 01月
価格:1,857円 (税込:1,950円)
採点:3.5点

[帯]
 月読、それは死者の最期の言葉を聴きとる異能の主。故郷を捨て、月読として生きることを選んだ青年、朔夜一心と、連続婦女暴行魔に従妹を殺され、単身復讐を誓う刑事、河井。
 ふたりが出会ったとき、運命の歯車は音を立ててまわりはじめる。

 ぼくはここにいる。きみはひとりじゃない。

[あらすじ]
 マンションのドアに浮き出たレリーフ。それは従妹が残した月導だった。数ヶ月にわたって連続して起きている暴行事件との関連はあるのか、手がかりを求めて部屋を訪れた河井は、ドアの前に佇む一人の青年と出会う。青年は朔夜と名乗り、月導から読み取った言葉を河井に語り始めるのだった。

[感想]
 人は亡くなるときに月導(つきしるべ)を残すという。それは死者の最期の思いが形をとるもので、手で触れられるものだけでなく、光や音、香りとなってその場に残ることもある。そして、月導から言葉を読み取る者を「月読」と呼ぶ。

 こんな不思議なことが当たり前のように存在する世界が舞台となった作品である。一見ファンタジーのように感じられるが、その部分をのぞいてしまえば、わたしたちの世界と何ら変わることのない日常がそこにある。

 死者の言葉といえばダイイングメッセージ。だが、ここではそうした露骨な使い方はされていない。故人の悔やむ気持ち、伝えたい思いが凝縮され、形となって表れる情緒的なものとして登場しているのだ。そのため作品全体が月の光にそっと照らされたように、寂然とした落ち着きあるものとなっている。また、月導や月読はこうした雰囲気作りの道具として使われているだけではない。トリックやプロット、「月読」という職業に就く主人公の人物設定といった物語を構成する複数のレベルで、重要な役割を果たしているのである。それぞれどのような場面で機能しているのか、施された仕掛けを探しながら読むのも楽しい。

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2005.02.07

『季刊島田荘司Vol.4 最後の一球』 島田荘司

shimada01

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著者:島田荘司
出版:原書房
ISBN:4562037954
発行:2005年 02月
価格:1,600円 (税込:1,680円)
採点:3.5点

[帯]
 お待たせしました!御手洗潔シリーズ書き下ろし最新長編
 「最後の一球」(480枚)一挙収録!
 生まれ故郷から近代日本を照射する「BACK TO FUKUYAMA」
 少年時代から作家への軌跡をたどる「誌上再現・島田荘司展」
 日本人の本質に鋭く切り込む   「日本学の勧め」など
 圧倒的高濃度大増ページ!

[あらすじ]
 美容院を営む青年は、母親の自殺未遂の理由を知りたいと御手洗を訪ねてきた。わずかな手がかりから、御手洗はその謎を解き明かす。すべてが解決したかに見えたそのとき、とあるビルの屋上で、火の気もないのに突然火災が起きるという事件が発生する。二つの事件をつなぐのは野球に人生をかけた一人の青年の物語だった。

[感想]
 幻想的な謎を論理的に解き明かすおもしろさ、社会の矛盾に対する憤り、心を包み込む温かなまなざしなど、御手洗潔シリーズには様々な魅力がある。この作品は、どちらかといえば後の二つに力点が置かれた、メッセージ性のある作品である。

 物語は青年美容師の相談から始まる。依頼された母親の自殺未遂の謎はすぐに解き明かされ、続いて密室状態での火災というもう一つの事件が発声する。謎としては、どちらにもさほど魅力は感じられないのだが、野球に人生をかけた青年の物語が始まることで、作品は急速に輝き始める。

 青年の独白がたどり着く先は、ほぼ見えている。事件そのものに不思議はない。だが、なぜそうしたことが起きたのか、何が彼にあったのか、それが何としても知りたくなる。そして、青年の積み重ねた努力と苦労の日々を読み進めるうちに、読者は作品の世界に深く引き込まれていく。序盤の謎と、そこに込められていたメッセージが青年の物語とつながり、鮮やかなエンディングが読者の心を揺さぶる。小道具の生かし方、構成の巧みさが光る作品である。

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2005.02.06

『回転する世界の静止点』 パトリシア・ハイスミス

highsmith01

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著者:パトリシア・ハイスミス /宮脇孝雄
出版:河出書房新社
ISBN:4309204252
発行:2005年 01月
価格:2,400円 (税込:2,520円)
採点:3.5点

[帯]
 パトリシア・ハイスミス単行本未収録作品集1
 追いつめられた人間は
 心に何を感じるのか?
 ミステリの鬼才ハイスミスの仮借なき心理描写の真髄を示す傑作短篇集!

[あらすじ]
 列車から降り立った青年は、田舎町の静かな佇まいに惹かれ、新しい生活の第一歩を踏み出す。都会とは違う人々の温かみに感謝しながら。だが、たった一つの過ちが彼の心の平穏を乱し始める……。

[感想]
 1938年から49年までの単行本未収録作を集めた短篇集である。初期のものばかりだが、いずれの作品でも心理描写は精妙で、小さな出来事が実にスリリングな物語に作り上げられている。以下、いくつかをピックアップして紹介する。

「素晴らしい朝」
 主人公の心をとらえた美しい町。それが、ある出来事によって彼の目には全く違うものに写るようになる。小さな疑問が次第に膨らみ、暴走を始める青年の心理描写が見事。
「不確かな宝物」
 古びた鞄に執着する浮浪者の物語。妄想が主人公を突き動かしていく様子が、緊迫感を盛り上げる。
「魔法の窓」運命の出会いを信じる孤独な男性が、“魔法の窓”のあるバーで一人の女性と巡り会う。現実を突きつけられるラストの喪失感がたまらない。
「ミス・ジャストと緑の体操服を着た少女たち」
 訪問客のためにとびきりの演技を披露しようとする教師と、異常なまでに厳しい指導に耐える少女たち。いよいよ本番となったときに起きる予想外の出来事。ラストの少女たちの姿に、両者の温度差が凝縮されている。
「カードの館」
 贋作だけを蒐集する男性は、音楽を愛せないピアニストに自分の秘密を打ち明ける。夢はあっけなく崩れるが、そこから生まれる小さな希望に心が温まる。
「自動車」
 故郷を遠く離れて新婚生活を始めた夫婦。自動車の扱いから始まった小さな不満が膨れあがっていく描写が優れている。
「回転する世界の静止点」
 小さな公園にやってくる二組の親子の物語。互いを意識しながら距離を保つ二人の女性の関係が興味深い。無邪気に戯れる子どもたちとの対比がアクセントとなっている。

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2005.02.05

新刊ミステリ 店頭確認

『季刊 島田荘司Vol.4』 島田荘司 原書房 1680円
【予約】『最後の願い』 光原百合 光文社 1890円
【予約】『反自殺クラブ』 石田衣良 文藝春秋 1600円

『季刊 島田荘司』は480枚の長編「最後の一球」を収録。また、福山で開かれた島田荘司展の様子が14ページにわたって掲載されています。後半部は高校での講演会記録と評論「日本学の勧め」。島田荘司のファンの方には必読の一冊です。
 予約の本が二つ。『最後の願い』は日常の謎を解き明かす青春ミステリ。『反自殺クラブ』は池袋ウエストゲートパークの5作目です。

 おまけで『デルトラ・クエスト3(2)影の門』。第3シリーズまで出ている人気ファンタジーの新刊です。フィギュア付きオリジナル携帯ストラップが当たるキャンペーン実施中。近所の書店では今日入荷していました。
『デルトラ・クエスト3(2)影の門』 エミリー・ロッダ 岩崎書店 945円

 もう一つ、『ライトノベルデータブック』は「初心者にも、上級者にも、絶対役立つ詳細データ完備!!」だそうです。「ライトノベル レーベル案内」では各出版社の傾向と代表的な作品が紹介されています。また、60名の作家を紹介する「徹底ガイド60」、SF、アドベンチャー、ファンタジー、ほのぼの・コメディ、歴史・伝奇とジャンル別に紹介する「シリーズ作品ブックガイド」は読み応えがありそうです。ミステリのジャンルはないのですね。「少年系」とあるので、「少女系」も出るのでしょうか。
『ライトノベルデータブック』 榎本秋 雑草社 1365円

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『ルネサンスへ飛んだ男』 マンリイ・ウェイド・ウェルマン

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著者:マンリー・ウェイド・ウェルマン /野村芳夫
出版:扶桑社ミステリー
ISBN:4594048757
発行:2005年 01月
価格:762円 (税込:800円)
採点:3.5点

[帯]
 驚天動地のタイムトラベル×
 血湧き肉躍る歴史冒険絵巻!
 意表をつく奇想と、精緻な時代考証で描く、
 名匠マンリイ・ウェイド・ウェルマン、幻の代表作

[あらすじ]
 青年レオ・スラッシャーは、時を超えて違う時代に自分を投影する時間反射機を発明した。友人の眼前で実験を行い、彼は15世紀のフィレンツェの町へ移動することに成功したが、着いた先は異端崇拝者たちの集会の只中。儀式を取り仕切る妖術師によって、レオは囚われの身となってしまう。

[感想]
 読み終えて、なるほどこのアイディアのために書かれたのかと素直に頷ける作品である。タイムトラベルものは数多くあり、様々な手法で読者を楽しませてくれるのだが、プロット自体はシンプル。張られた伏線が一点に集中しているという点で、すっきりとまとまった仕上がりになっている。

 ルネサンス期というとあまり身近で語られる時代ではないが、史実や生活の様式、芸術・文化に関する記述には原註がつけられており、主人公の青年が、未来人としての知識と経験を生かして危機を乗り越えるところも十分楽しめるよう配慮されている。また、史実とのずれが生じないように、主人公にはタイムトラベルによる記憶障害を持たせ、妖術師には催眠術による記憶の再現をさせている。事実と虚構とのバランスをどのように取るか、その手法を読み取るのもおもしろいだろう。

 惜しいのは、妖術師の奴隷となっている少女の造形に深みがないこと。そのため主人公とのロマンスが今ひとつ盛り上がらず、着想を支える材料の一つが、十分に効果を上げていない。ネイサンの『ジェニーの肖像』、デヴローの『時のかなたの恋人』くらいの想いを読み手に伝えてほしかった。

 なお、この作品は、出版・雑誌掲載時に変更が加えられており、翻訳にあたっての苦労があとがきに詳しく紹介されている。また、修正しきれない部分については巻末に異なるバージョンが付録として収められている。読者としては大変ありがたいことである。

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2005.02.04

『ルネサンスへ飛んだ男』 タイムトラベルものについて

 藤原義也さんのサイト「本棚の中の骸骨」で、『ルネサンスへ飛んだ男』の紹介を見て買ってきました。主人公は時代に自分の姿を反射させ投影するという方法で時間を遡ります。

 主人公が違う時代の中で自分の知識や経験をどのように使うのか、そこがタイムトラベルもののおもしろさの一つだと思うのですが、この作品の場合は画家としての技量を生かしてルネサンスの作品に自分の痕跡を残すというもののようです。これ、おもしろそうですね。

 そしてもう一つ、忘れてはならないのが登場人物の心のつながりと、時の隔たり。愛情であったり、郷愁であったり、作品によって違いはありますが、超えられない壁の存在が読者の心に強く訴えるものがあると思うのです。

 わたしが好きなタイムトラベルものを挙げておきます。どれもすばらしい物語です。

『ゲイルズバーグの春を愛す』 ジャック・フィニイ ハヤカワ文庫 630円
『ふりだしに戻る(上)』 ジャック・フィニイ 角川文庫 567円
『時のかなたの恋人』 ジュード・デヴロー 新潮文庫 940円
『トムは真夜中の庭で』 フィリパ・ピアス 岩波少年文庫 756円
『ジェニーの肖像』 ロバート・ネーサン 偕成社 735円
『蒲生邸事件』 宮部みゆき 文春文庫 900円

 何か大事な作品を忘れているような気がしますが……。

店頭確認
『ルネサンスへ飛んだ男』 マンリー・ウェイド・ウェルマン 扶桑社ミステリー 800円

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2005.02.03

『冥い天使のための音楽』 倉阪鬼一郎

kurasaka01

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著者:倉阪鬼一郎
出版:原書房(ミステリー・リーグ)
ISBN:4562038632
発行:2005年 02月
価格:1,600円 (税込:1,680円)
採点:3.5点

[帯]
「庭に、死体が埋まっている。
 それを天使が祝福している――」
 妖美な旋律
 戦慄の仕掛けが交錯する
 長編本格ゴシック・ミステリー

[あらすじ]
 友愛音楽大学に学ぶ香子と朋子は、蓮田、宮村という二人の青年とともにマヌエラ・カルテットという弦楽四重奏団に所属していた。発表会に向けての練習が進む中、リーダーである蓮田と交際していた小野詩音というヴァイオリニストが失踪してしまう。一方その頃、ある屋敷の中では何者かが訪れる女性を殺害し、庭に埋めることを繰り返していた。
[感想]
 作品全体が一つの音楽となるよう、きめ細やかに構成された作品である。各章にはオーケストラの開始から終了までを辿る章題がつけられ、物語はそれに準じて進行する。音楽用語がところどころに挿入され、読者は殺人者の奏でる曲の聴き手として、物語を読み進めることになる。

 登場人物の造形や配置が巧みで、読者は最後まで殺人者が誰なのか分からない。ミスリードを誘う手がかりが多く、提示された条件では絞り込むのは難しいためである。詩的な表現を取り入れ、視覚的にも文字の配列に工夫を凝らしていることで、幻想的な場面が美しく描き出されているが、その中にもプロットの工夫が織り込まれているところが嬉しい。

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2005.02.02

『ヘンリーの悪行リスト』 ジョン・スコット・シェパード

shepherd01

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著者:ジョン・スコット・シェパード/矢口誠
出版:新潮文庫
ISBN:4102151214
発行:2005年 02月
価格:819円 (税込:860円)
採点:4.0点

[帯]
 爆笑必至 感涙保証の快作
 2006年映画公開決定!

[あらすじ]
 「暗殺者」の異名をとる超エリート・ヘンリーは、これまでに多くの友人を踏み台にしてのし上がってきた。それもすべては、かつて自分を捨てた女性を見返すため。だが、故郷へ錦を飾ろうとする彼に届いたのは彼女の死の知らせだった。これまでの悪行の巨大な反動がヘンリーを襲う。死を決意してバルコニーから身を投げる寸前、メイドの一言が彼を救った。「すべてにきっちり片をつければいいのよ」――かくして、ヘンリーの贖罪の旅が始まった。

[感想]
 自分の犯した過ちを償うためにリストを作り、一人一人に心からの謝罪をする。パートナーとなるのは、主人公ヘンリーを「天の声」で救った不思議なメイド。二人の苦難に満ちた5日間の顛末を描いたロード・ノベルである。

 金、地位、名誉。頂点を目指すヘンリーにとって、自分以外はすべて踏み台にすぎない。だが、踏まれた者にとっては、それが一生涯の傷となる。中には再起不能なほどのショックを受けた者もいる。そうした人々に対して許しを請うのだから、そうそう簡単にいくはずがない。殴られ、銃を突きつけられ、頭上からはコップが落ちてくる。ヘンリーの方策といえば、とにかく心から謝罪することのみ。次々起きるハプニング、そのたびに立ち上がり、一枚ずつ心の鎧を脱ぎ捨てて純真な心を取り戻していくヘンリーの姿が楽しく、また清々しい。

 そして何より、彼をサポートするメイドのソフィーの存在がよい。ある時は勇気づけ、ある時は立ち直れないほどの叱責を容赦なく浴びせる。厳しい中にも優しさと愛情をもってヘンリーを導く一方、彼女自身も何やら秘密を抱えている。魅力溢れるヒロインで、次第に惹かれていく二人の行く末も読みどころの一つである。

 ミステリに日常の謎があるなら、これこそ日常の冒険小説。スケールは小さいが、ラストの衝撃と感動は大きい。心に残る作品である。

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2005.02.01

子どもをミステリ好きにする絵本(BlogPet)

きょうわとそんは小説が推理されたみたい…
mysterybestは、

 思いつきです。
絵本にもいろいろありますが、お子さんをミステリ好きにしたいと思っ

といってました。

*このエントリは、BlogPetの「わとそん」が書きました。

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『ヘンリーの悪行リスト』読了

「ティモシーとサラのとりかえっこ」を読み聞かせながら、うとうとしてしまいました。子どもの横にいると、温かくて気持ちいいですね。もしかしたら、寝ながら読み聞かせることで、子どもは本の内容を楽しむだけでなく、人の身体の温かさを感じて、本を好きになっていくのではないかと、そんなことを思いついてしまいました。

『ヘンリーの悪行リスト』、読み終わりました。
 笑えて泣ける、読後感のよい小説でした。これまでの悪行をどのようにして償うのか、主人公はとにかく心から謝罪するほかないのですが、相手次第で展開が違ってくるところが楽しめます。それから何より主人公をサポートするヒロインがいいですね。これはおすすめです。

『ヘンリーの悪行リスト』 ジョン・スコット・シェパード 新潮文庫 860円

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