本好きな子の物語
ある日ホームズの映画を見ました。なぜかネッシーが出てきました。
こんなおもしろい話があるんだ、とその子は思いました。
おばあちゃんの家に行きました。
ホームズは全部そろっていました。
ドイル傑作集というホームズとは違うお話もいっしょでした。
その子は初めて文庫本というものを読みました。
坂を上った団地の端に、小さな本屋がありました。
子どもの足でも、十歩も歩けば突き当たる、小さな本屋でした。
毎日休まず通いました。
クイーンがありました。ローマ劇場と日本庭園は角川文庫。アメリカ銃は創元推理文庫。
横溝正史がありました。犬神家は表紙が二種類ありました。
仁木悦子がありました。猫は知っていたには、江戸川乱歩賞とありました。
日本推理作家協会賞という字も見つけました。
佐野洋がありました。黒字に白の文字ばかりの中で、一本の鉛だけが白地に黒でした。
完全試合は角川でした。1ページだけ、抜けていました。
「乱丁・落丁本はお取り替えします」という意味を、その子は初めて知りました。
太陽がいっぱいを見ました。アラン・ドロンは素敵に見えました。
小さな本屋に行くと、同じ題の本がありました。
見知らぬ乗客とマネキン人形殺害事件の間にありました。
みんないっしょに買いました。
クリスティもカーも、その本屋にはたくさん並んでいました。
ハメットを読みました。チャンドラーを知りました。
ある日、駅の階段から落ちました。
ランドセルを下に、仰向けになって落ちました。
足をくじいても甲虫殺人事件は放しませんでした。
電車が出てくる本も好きになりました。
館という字のつく本が出てきました。
占星術殺人事件はお気に入りでした。
読みました。
読みました。
本がたくさん並び、その子は大人になりました。
ある人に本を貸しました。雪の断章。
二人で暮らして、二人の女の子が生まれました。
もっとたくさんの本が並び始めました。
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Comments
本の好きな子供だったあなたへ
きっと私より若い方だと思いますので、ご存知ないかもしれません。小学生の私が、学校の図書室で出会ったステキな推理小説、それがあかね書房の「少年少女世界推理全集」でした。クイーン、ヴァン・ダイン、ウールリッチ、ドイル等子供向けに書かれたものでしたが、挿絵のすばらしさとあいまって、たちまち夢中になってしまいました。でも残念なことに今はもうありません。
そこでこの全集を復活して子供たちに読ませてあげたい。
実は「Fukkan」で投票を行っていまして、100票になると復刊交渉してくださるのです。
もしこの本をご存知でしたら、ぜひ1票をお願いしたいと思います。
Posted by: 僧正 | 2005.01.30 at 10:36 PM
僧正さん
コメントありがとうございました。
あかね書房の「少年少女世界推理全集」、小学校の図書室で見たことがあります。何冊かは読んだはずです。懐かしいですね。復刊の投票、入れておきました。今の子どもたちにも、読んでもらいたいです。
Posted by: とも | 2005.02.01 at 05:30 AM
復活後の驚異的な更新ぶりに日々感心いたしております。
ホームズの優雅な生活映画がともさんの原点だったのですね。
私の場合は、南洋一郎ルパンが原体験で、文庫本とのファーストコンタクトは同じくドイルなのですが、「マラコット深海」でした。そこから火星やら、銀河系方面に流れて、ニューヨークの路面電車内でのニコチン毒殺現場にまみえるのは少し経ってからのことでした。
「黒地に白抜き文字の佐野洋」には、一瞬、角川文庫の佐野洋は青緑地に白抜き文字で、黒地に白抜きは笹沢左保とか清張(濃グレー地?)なのでは?と突っ込みかけたのですが、そうそう、講談社文庫の「死んだ時間」とかがそうでしたっけね。
私の初「乱丁本」は「幸運な足の娘」でした。
「ちっとも幸運じゃないや」と思いましたが、記念に取っておきました。
ああ、そうか、つまり初ダブり本も「幸運の足の娘」だったのか(と今更ながら気がつきました)
ランドセルを背負ってひっくり返った形はまさに甲虫ですね。
塀からおちていたら僧正、犬にかまれたらケンネル、馬にけられたらガーデン、水にあたったらカジノ、龍神さまに攫われたらドラゴン、ってなわけはないですね。
いまやカルト人気の絶版作家:佐々木丸美が縁結びの紙、もとい「神」、というのも素敵だなあと思います。
奥さんにとっては斉藤由紀映画の原作という感じだったんでしょうか?
これからも更新を楽しみにしております。
Posted by: 庵本譚 | 2005.02.02 at 06:51 PM
庵本譚さん
お便りありがとうございます。
ホームズの優雅な生活は、その後見る機会はなかったのですが、創元推理文庫で読むことができました。見つけたときはとても嬉しかったのを覚えています。
庵本譚さんは、SFも読まれるのですね。わたしはそちらの方はほとんど読んでおりません。幅広い読書をされていて、すばらしいですね。
こちらのサイトの方は、管理がしやすいので以前よりも短い時間で作業をすることができます。細く長く続けていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by: とも | 2005.02.03 at 09:31 PM