『トフ氏と黒衣の女』 ジョン・クリーシー
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著者: ジョン・クリーシー /田中孜
出版:論創社(ハードカバー)
ISBN:4846005151
発行:2004年 11月
価格:1,800円 (税込:1,890円)
採点:3.0点
[帯]
貴族探偵と殺し屋アーマ
――宿命の対決!
「これで黒服が脱げるってわけだな?」
「そうだね」
[あらすじ]
貴族でありながら、ロンドンの貧民街にも詳しいリチャード・ローリンソン卿(通称トフ氏)は、ある日殺し屋のアーマという女性と出会う。トフ氏は以前、アーマの兄と対決したことのあるトフ氏は、海外に逃亡したはずの彼女の帰国に驚くと同時に、大規模な犯罪計画の進行を予感する。なぜなら、アーマが寄り添っていたのは著名な資産家だったのだ。
[感想]
「ギデオンと放火魔」のJ.J.マリックが別名義で書いたトフ氏シリーズのひとつ。下町を愛し、そこに住む人々の生活に入り込んで悪を懲らしめるという、変わり者の貴族が主人公である。
推理を楽しむというよりも主人公の縦横無尽の活躍を描いた活劇もので、気軽に読める作品となっている。スリル溢れる場面がいくつも用意されているが、おもしろいのは裏で進行している犯罪が結末まで分からないこと。トフ氏とアーマとの対決に気をとられ、事件の全体像などすっかり忘れてしまう。そのあたりを意図した構成というわけではないだろうが、なるほどそうだったのかとちょっとした驚きがある。
ノックスの『閘門の足跡』の解説で真田啓介氏が当時の探偵小説におけるフェアプレイの二つの側面について書かれている。重要な手がかりを読者から隠さない、という記述に関する面と、もう一つは「フェアプレイに価値を認め、それを尊重し、それが社会のルールとして通用している」世界を描いているという面である。なるほどこの『トフ氏と黒衣の女』においても、たとえ相手が悪役であっても、生死に関わる重大な場面でも、約束は必ず守られる。そして悪役もまた大物であるほど非情であるが卑怯でないという描き方がされている。こうした作品が多く書かれ、楽しんで読まれていたということは興味深い。この時代の探偵小説に見られる価値観を探りながら読むのもおもしろい。
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