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2005.01.31

新刊ミステリ 店頭確認+思いつき

「『ゲド戦記』の作者、ル=グウィン絶賛!」という帯を見て、『砂漠の王国とクローンの少年』を買ってしまいました。全米図書賞受賞の近未来SFです。

 ところが、帰ってきてから置いたはずの場所に本が見あたりません。おかしいなと思って、家に着いたところから順番に思い出してみました。玄関、廊下、リビング……。ふと顔を上げるとパートナーの手に本が。先を越されてしまいました。

『砂漠の王国とクローンの少年』 ナンシー・ファーマー DHC 1995円
『Battle royale 2外伝3ーB 42 students』 杉江松恋 太田出版 1260円
『月読』 太田忠司 文藝春秋 1950円
『回転する世界の静止点』 パトリシア・ハイスミス 河出書房新社 2520円

『Battle royale 2外伝』は、2で命を落とした鹿之砦中学校の生徒たちのゲーム前の一瞬が、短篇としてアルバムのように収められています。一人一人に思いを込めて書かれた物語は、2をまず手にとってから読んでいただきたいです。

『月読』は死者の最期の言葉を聞き取るという特殊能力を持った青年と殺害された妹の敵を討とうとする刑事の物語。表紙をめくるときれいなイラストがありました。スペシャルインタビューと、著作リストつき。読んでいたら、親指シフトキーボードの話が出ていました。わたしも以前使っていたのですが、打ちやすい配列でしたね。

『回転する世界の静止点』はパトリシア・ハイスミスの初期短篇集。没後10年の記念出版だそうです。「単行本未収録作品集1」とあるということは、続きが出るということですね。

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2005.01.30

本好きな子の物語

ある日ホームズの映画を見ました。なぜかネッシーが出てきました。
こんなおもしろい話があるんだ、とその子は思いました。

おばあちゃんの家に行きました。
ホームズは全部そろっていました。
ドイル傑作集というホームズとは違うお話もいっしょでした。
その子は初めて文庫本というものを読みました。


坂を上った団地の端に、小さな本屋がありました。
子どもの足でも、十歩も歩けば突き当たる、小さな本屋でした。
毎日休まず通いました。

クイーンがありました。ローマ劇場と日本庭園は角川文庫。アメリカ銃は創元推理文庫。
横溝正史がありました。犬神家は表紙が二種類ありました。
仁木悦子がありました。猫は知っていたには、江戸川乱歩賞とありました。
日本推理作家協会賞という字も見つけました。
佐野洋がありました。黒字に白の文字ばかりの中で、一本の鉛だけが白地に黒でした。
完全試合は角川でした。1ページだけ、抜けていました。
「乱丁・落丁本はお取り替えします」という意味を、その子は初めて知りました。

太陽がいっぱいを見ました。アラン・ドロンは素敵に見えました。
小さな本屋に行くと、同じ題の本がありました。
見知らぬ乗客とマネキン人形殺害事件の間にありました。
みんないっしょに買いました。

クリスティもカーも、その本屋にはたくさん並んでいました。
ハメットを読みました。チャンドラーを知りました。

ある日、駅の階段から落ちました。
ランドセルを下に、仰向けになって落ちました。
足をくじいても甲虫殺人事件は放しませんでした。

電車が出てくる本も好きになりました。

館という字のつく本が出てきました。
占星術殺人事件はお気に入りでした。

読みました。

読みました。

本がたくさん並び、その子は大人になりました。


ある人に本を貸しました。雪の断章。
二人で暮らして、二人の女の子が生まれました。


もっとたくさんの本が並び始めました。

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2005.01.29

『キルケーの毒草』 相原大輔

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著者:相原大輔
出版:光文社(カッパノベルス)
ISBN:4334076025
発行:2005年 01月
価格:1,238円 (税込:1,300円)
採点:3.0点

[帯]
 輝ける退廃の闇。
 おそるべき連鎖殺人。

[あらすじ]
 作家・鳥部林太郎は行方不明となった友人の手がかりを捜して桐島秀典男爵家を訪れた。奇遇にも、鳥部はそこで朋友大島と再会するが、屋敷で催された晩餐会で、奇怪な事件が起きてしまう。男爵家の次女・朋子が大量の血痕を残し、自室から忽然と消え去ってしまったのだ。

[感想]
 『首切り坂』でデビューした作者の第二長編。「キルケー」はギリシア神話のアイアイエ島に住む美しい魔女で、人を豚に変えるという。懐かしい探偵小説の味わいと幻想的な作品世界を描き出した前作とは変わって、タイトルに違わず毒物談義に始まる衒学趣味に彩られた作品となっている。

 序盤に語られる怪談はよくできており、読者の不安感をうまくかき立てる。だが、事件の推移を丁寧に追う手法と登場人物に語らせるペダントリーによって、その効果が薄れてしまっているのが惜しい。作品から感じられるのは悲哀と言うよりも退廃。悲劇的な要素は十分だが、個性的な登場人物が多く、事件の異常さが大写しされているためだろう。密室トリックも用意され、力の入った終盤にはこれでもかというくらいの展開が準備されている。少々欲張り気味ではあるが、これもまた楽しい。

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新刊ミステリ 店頭確認

 新潮文庫、創元推理文庫の新刊です。

『アニーの冷たい朝』 黒川博行 創元推理文庫 693円
『左手首』 黒川博行 新潮文庫 500円
『未練』 女刑事音道貴子 乃南アサ 新潮文庫 500円
『残響』 柴田よしき 新潮文庫 620円
『星が降る』 白川道 新潮文庫 540円
『背いて故郷』 志水辰夫 新潮文庫 700円
『そして粛清の扉を』 黒武洋 新潮文庫 580円
『作家の犯行現場』 有栖川有栖 新潮文庫 700円
『悪魔の赤毛』 デイヴィッド・コーベット 新潮文庫 980円
『スパイズ・ライフ(上)』 ヘンリー・ポーター 新潮文庫 700円
『スパイズ・ライフ(下)』 ヘンリー・ポーター 新潮文庫 660円
『ヘンリーの悪行リスト』 ジョン・スコット・シェパード 新潮文庫 860円
『巡礼者たち』 エリザベス・ギルバート 新潮文庫 620円

『アニーの冷たい朝』は大阪府警捜査一課シリーズ第8弾。若い女性を着飾って殺害するという猟奇的な事件が連続して起こります。。講談社文庫で出ていましたが、品切れになっています。『左手首』は小説新潮に掲載された短篇七作を収録。こちらは2002年の作品ですから、新旧の二作を読み比べるのもおもしろいでしょう。どちらも解説では作風の変化について触れられていて、こちらも興味深いです。ほぼ同じ日に出るというのは珍しいことですね。
『背いて故郷』は推理作家協会賞受賞作です。心に残る作品でした。おすすめです。最近、新潮文庫から志水辰夫の作品が続けて出ていますね。質の高いミステリが多いので、長く読み継がれると嬉しいです。『そして粛清の扉を』はホラーサスペンス大賞の受賞作です。
『作家の犯行現場』は著者がミステリの舞台となった場所を巡り、写真と文で綴ったエッセイ。美しい写真から、以前読んだ作品を思い出してみるのも楽しいでしょう。
 『悪魔の赤毛』はMWA最優秀処女長編賞にノミネートされた作品。2作目も他の賞にノミネートされたということで、先が楽しみです。『ヘンリーの悪行リスト』は映画化が決まっている作品で、ミステリとは言えませんが、これはよいでしょう。かつての恋人の死を知った青年が、恋人が自分から遠ざかっていった理由を知り、これまでに犯した罪を悔いてメイドと一緒に贖罪の旅に出るという物語。「メイド」に反応した人、買いです。『巡礼者たち』はクレストブックスの一冊として刊行された作品の文庫化です。

読書中 『キルケーの毒草』 相原大輔
 前作『首切り坂』と雰囲気がずいぶん違います。終盤がたいへんなことになっています。

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2005.01.28

学級文庫に置きたい

 帰りがけに古本屋に行きました。買ったのはすべて児童書。青い鳥文庫やポプラ社文庫など30冊くらいをまとめて購入。「ワンピース」の小説版もセットで置いてあったので、買ってしまいました。全部、子どもたちに読んでもらうためです。

 4月から教室の後ろに少しずつ本を置いて、今では端から端まで本が並ぶようになりました。昨日の買い物で、いよいよ二列目に突入です。ときどき、「テレパシー少女蘭ノートの2巻がありません」とか、「はやみねかおるの新しいのが読みたいです」などとリクエストをしてくれる子もいます(これがなかなかないのです)。本を最初から最後まで読み通したことのなかった子も、漫画や雑誌しか読めなかった子も、みんな好きな本を選んで読むことができるようになりました。家でも本の話が出るらしく、保護者の方からは図書館に行くようになったとか、本を欲しいと初めて言われた、などと嬉しいお話をうかがうこともあります。

 本を読ませようと思ったら、子どもが読んでおもしろい本を側に置くとよいですね。そして、読むという行為を繰り返し練習することも大切だと思います。「読むことができる子」ではなく、「読みたいと思える子」にしたい、わたしの願いです。

新刊が出ています。
『アニ-の冷たい朝』 黒川博行 創元推理文庫 693円
 黒川博行は、今月新潮文庫でも出るようですね。新旧の作品が読めるというのはありがたいことです。

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2005.01.27

ミステリマガジン3月号 2004年翻訳ミステリ回顧

 毎年この時期の号には、一年間のミステリに関するデータが掲載されます。新刊総目録、著者・作品名索引、文庫化・再刊リスト、主要受賞作、物故作家など重要な情報が一冊にまとめられているのはありがたいことですね。また、作家、評論家、翻訳家127人による「私のベスト3」も楽しく、読み逃した本を見つけてメモしてしまいました。買ってはあるけれど、積んだままになっている本を探してほっとしたり、記憶になくてどうしようかと悩んだり。楽しい時間です。

 今年は『ホッグ連続殺人』が久しぶりに出たと思ったら、『幻想と怪奇』も刊行されるのですね。また、『樽』に続いて『黒い天使』、『忙しい蜜月旅行』、『剣の八』も予定されているそうです。『ダヴィンチ・コード』や『魔術師』、『奇術師』など、昨年の海外ミステリはよい作品に恵まれました。国内ミステリにくらべて、海外作品のファンは少ないのではないかといつも思っていたのですが、少しは増えたのではないでしょうか。たくさんの方に読んでいただけたら嬉しいです。今年も期待しています。

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2005.01.26

おしまいのページをそっと見る人

 小学校の教科書に、推理小説に関する記述があります。「ニュースを伝える」という国語の教材で、次のように記されています。

 ある事件が起きて、捜査の手がしだいにのび、たんていがなぞ解きをして、最後に犯人がつかまるというすじだてになっている。犯人がだれかという、結論が最後にくるわけだ。読者は、最後まで待ち切れず、とちゅうを飛ばして、おしまいのページをそっと見たりする。

 この「結論を知りたい」という欲求に応えるのが、全体の中の大事なことを先に解ってもらう「逆三角形の構成」で、ニュースの場合がこれに当たるというわけです。確かにニュースを見ていると、結論や大事なことが先に来て、その後詳細な内容の説明になりますね。

 しかし、こう書かれてしまうと、何と単純な構成なのだろうと思われてしまいそうで、困ってしまいます。ニュースと推理小説の構成の比較、ちょっと強引なような気もしますね。

 些末なことですが、「とちゅうを飛ばして……」について。結末にたどり着くまでの過程の方がおもしろいと思うのですが。おしまいのページをそっと見る人、本当にいるのでしょうか。

新刊です。店頭ではまだ確認していません。
『悪夢はダブルでやってくる』 浅暮三文 小学館 1,470円
『雨恋』 松尾由美 新潮社 1,470円
『月読』Honkaku mystery masters 太田忠司 文藝春秋社 1,950円 

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2005.01.25

新刊ミステリ 店頭確認

『月夜の晩に火事がいて』 芦原すなお 創元推理文庫 987円
『ラヴクラフト全集7』 H.P.ラヴクラフト 創元推理文庫 735円
『見えない人影 各務原氏の逆説』 氷川透 トクマ・ノベルス 860円
『冥い天使のための音楽』 倉阪鬼一郎 原書房 1,680円
『死を呼ぶスカ-フ』 ミニオン・G.エバハ-ト 論創社 2,100円
『検屍官の領分』マ-ジェリ-・アリンガム 論創社 2,100円
『またまた二人で泥棒を』 E.W.ホ-ナング 論創社 1,890円
【予約】文庫版・少年探偵江戸川乱歩 全26巻 16,380円
【予約】文庫版・怪盗ルパン 全20巻 ルブラン ポプラ社 12,600円

『月夜の晩に火事がいて』は、著者初の長編ミステリです。未読の方は『ミミズクとオリーブ』、『嫁洗い池』も一緒にどうぞ。
『ラヴクラフト全集7』で、全集は完結だそうです。この巻が出るのにずいぶん時間がかかりましたが、その当たりの事情は解説にあります。
『見えない人影』は『各務原氏の逆説』に続く学園ものの本格ミステリ第2弾です。氷川透の作品は理詰めが楽しいですね。わたしは、『密室は眠れないパズル』が好きです。

 下の4作品は確認していません。小さな書店しかないもので、入荷しないことが多いのです。『冥い天使のための音楽』は原書房の「ミステリー・リーグ」の作品です。『死を呼ぶスカーフ』他2冊は、古い作品の発掘に力を入れている論創社のもの。「論創海外ミステリ」というシリーズで、これまで既に6冊刊行されています。

 ポプラ社から、児童向けのセットが2つ出ます。少年探偵団、ルパンのハードカバーの廉価版。個人で持つには、小さい方がありがたいです。

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2005.01.24

『本棚探偵の冒険』の冒険

『本棚探偵の冒険』 喜国雅彦 双葉文庫 800円
『本棚探偵の回想』 喜国雅彦 双葉社 2940円

 ネット上のミステリ好きな人たちが集まるイベントに「MYSCON」があります。たくさんの方が集まって、一晩中ミステリの話をするという楽しい会です。以前、参加させていただいたときに、作者の喜国さんや、登場している石井さん、日下さん、彩古さん、よしださん、そしてお名前が出ているkashibaさんのお話を聞くことができました。

 古書についての知識はなくても、それなりに読んでいるから、分かると思っていたのです。それまでは。でも、間違いでした。この方たちのお話を聞くと、知らない作家、聞いたこともない作品が次々に出てくるのです。そんなものがあったのか、というところまでも行かない。「それは何?」という世界です。関口巽状態です。わたしはひよこだと自覚した瞬間でした。もちろんあちらはニワトリなどというレベルではありません。マルタの鷹だったり、荒鷲の要塞だったり、不死鳥の騎士団だったりするわけです。この衝撃は大きかったです。そして、嬉しかったのです。本の世界は、どこまでも深く、何よりも楽しいのだなと改めて感じることができたのですから。

 わたしが買う本はほとんどが新刊ですが、たまに古い本を探しに出かけることがあります。めったにない本を棚に見つけた時の喜びは、言葉で言い表せるものではありません。ところが困ったことに一度そうした経験をすると、またあるかもしれないと思ってしまうのですね。そしてある日、無意識のうちに古本屋を探している自分に気づくのです。ここまで来るともう病気です。

 この『本棚探偵の冒険』、『本棚探偵の回想』には、読んだ人をそちらの世界に引き込んでしまうという恐ろしい力が秘められています。アブドゥル・アルハザードもびっくりです。本探しは冒険です。読むことだけでなく、本をまるごと楽しんでしまおうという気概に溢れたこの作品で、新しい楽しみ方を見つけてください。

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2005.01.23

『模像殺人事件』 佐々木俊介

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著者:佐々木俊介
出版:東京創元社
ISBN:4488012035
発行:2004年 12月
価格:1,600円 (税込:1,680円)
採点:4.0点

[帯]
 誰が殺したか?
 いかに殺したか?
 問題はそんなところにはない。
 八年間音信不通だった長男が二人帰ってきた。
 山中に立つ“不吉のマヨヒガ”をめぐる真相は?

[あらすじ]
 木乃家の長男・秋人が8年ぶりに帰ってきた。大怪我のため顔全体を包帯で覆って。だが、その二日後にもう一人の包帯男が現れ、自分こそ秋人であると名乗る。たまたま屋敷に足を踏み入れた探偵作家はそこで起きる殺人事件の目撃者となる。

[感想]
 探偵小説の世界をそっと現代に持ち込んだ趣のあるミステリである。息子を名乗る二人の包帯男の登場やなど大時代な印象は受けるが、灰汁の強さはそれほど感じられない。千街晶之の解説にある通り、全体を通してひっそりとした雰囲気があり、古い作品を手に取ることのない読者にも抵抗なく読める作品となっている。

 大掛かりなトリックが使われているが、これを作品の世界にとけ込ませている点が巧い。作者はまず外部の人物である探偵作家を登場させている。この偶然立ち寄った第三者の目を通して事件を語らせることで、人里離れた屋敷で起きる出来事を不可解な事件として読者に提示する。その上語り手である探偵作家は、作中ではすでに病死しており、彼の未完の小説とも遺書ともいえる作品を、探偵役の人物が読むという設定となっている。

 これはまるで二重の窓越しに景色を見るような幻想的な印象を読者に与えるだけでなく、当事者と直接会えば入手できる情報を遠ざけ、不思議を不思議のままに結末まで持続させる効果を与えている。複雑怪奇な事象がある一つの見方で納得のいく結末へと帰結する美しさ。謎と真相の対比もこうした巧みなカモフラージュによって効果的に演出されているのだ。タイトルに込められた意味がじわりと浮かび上がるところで背筋が寒くなる。

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2005.01.22

子どもをミステリ好きにする絵本

hayashi01 思いつきです。絵本にもいろいろありますが、お子さんをミステリ好きにしたいと思ったらこんな本はいかがでしょう。

『きょうはなんのひ?』 瀬田貞二 作・林明子 絵

 まみこは朝、学校の出がけに「おかあさん、きょうは なんのひだか、しってるの?」と声をかけます。与えられる情報は「かいだん 三だんめ」だけ。おかあさんは、そこで「ケーキのはこをごらんなさい」と書かれたメモを見つけます。

 この後、メモ探しが何度も繰り返されるのですが、ヒントの中には場所を絞りきれないものがあり、お母さんは名探偵さながら、推理をしながらメモを探し続けます。特に、電話でお父さんに連絡してポケットの中を確認してもらうという場面はおもしろく、遠隔操作まで使うのかと驚かされます。このあたりは繰り返しの中にちょっとした変化を与え、子どもたちをびっくりさせる仕掛けです。

 ところが絵本はここでは終わりません。何の日だったのか、その謎はラスト1ページで明かされるのですが、ここには子どもにも分かりやすい、基本的な暗号トリックが使われているのです。それもダブル・ミーニングの言葉遊びまで使って。そして、最後はラスト一行の衝撃。「おとうさんと おかあさんは、ほんとうに しらなかったのでしょうか」。読み終えて、はたしてどうであったのかを子どもたちに振り返らせるのです。リドル・ストーリーにも似たおもしろさもあり、ミステリ好きの大人の読者から見れば、一冊の絵本としてはトリックを贅沢に使いすぎとも感じられるでしょう。お子さんに、また、お子さんが生まれたお友達に、プレゼントしてはいかがでしょう。

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新刊ミステリ 店頭確認

『キルケーの毒草』 相原大輔 カッパノベルス 1300円
『ビーストシェイク』 戸梶圭太 カッパノベルス 840円
『悪の華』 新堂冬樹 カッパノベルス 1260円
『孔雀狂想曲』 北森鴻 集英社文庫 540円
『異邦人 fusion』 西澤保彦 集英社文庫 540円

『酔いどれに悪人なし』 ケン・ブルーウン ハヤカワ・ミステリ文庫 903円
『樽』 F.W.クロフツ ハヤカワ・ミステリ文庫 903円
『ホッグ連続殺人』 W.L.デアンドリア ハヤカワ・ミステリ文庫 819円
『古い骨』 アーロン・エルキンズ ハヤカワ・ミステリ文庫 819円

 相原大輔は、『首切り坂』で幻想的な探偵小説の世界を楽しませてくれました。トリックはとんでもないものなのですが、それもありと思わせてしまうような不思議な作品でした。『キルケーの毒草』も期待大です。
『孔雀狂想曲』は骨董品屋・雅蘭堂を舞台にした連作ミステリ。『異邦人』はタイムスリップものです。父親が殺害された23年前に戻った主人公が、事件を防ごうとします。西澤保彦の作品は、SF的な設定の中にミステリとしての謎解きのおもしろさを取り入れ、さらに登場人物の心の揺れを繊細に描き出している点が魅力です。
 ハヤカワ・ミステリ文庫からは、新訳や新装版が出ています。『樽』はクロフツの名作。「クラシック・セレクション」と銘打っての登場です。解説は森英俊。力入っていますが、それだけ質的にも歴史的にも価値ある作品なのです。次回配本はウールリッチの『黒い天使』。こちらも楽しみですね。
『ホッグ連続殺人』もまた本格ミステリの傑作です。事件のたびに残される「H.O.G.」の文字。謎解きの楽しさを存分に味わえる作品です。というよりも、この本が品切れになっていたということに驚いてしまいました。奥付は、2005年1月となっていますから、新装版ということになります。教授の名前が少し変更されています。
『古い骨』は、以前ミステリアス・プレス文庫で刊行されていたものの再文庫化。シリーズが続けて出るとよいのですが。
『酔いどれに悪人なし』はシェイマス賞最優秀長編賞受賞作です。米国ではなく、アイルランドの作品で、読書好きの私立探偵という設定がよいですね。解説を読むと、エド・マクベインやペレケーノスの名前が出てくるとか。エドガー賞の方にもノミネートされました。
 何冊かの本を机の上に並べて、どれから読もうかと考えている時間がたまらなく好きです。

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終戦のローレライ 限定フィギア付きBOXセット

 映画化された『終戦のローレライ』のフィギア付きBOXセットの予約が始まりました。通常とは違うカバーのついた文庫4冊に、海洋堂のフィギアが3体ついているそうです。フィギアのついたミステリというのは初めてのことですから、伝説(?)になるでしょうね。ハードカバーは持っていますが思わず予約してしまいました。
10000セット限定ということです。コレクションしたい方は、2セット買うのでしょうか。お早めにどうぞ。

【予約】 終戦のローレライ フィギュア付きBOXセット
限定10000セット

出版社:講談社
ISBN:4069360530
本体価格:3,800円 (税込:3,990円)

2005年2月まで予約受付中
(2005年発売予定)

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2005.01.21

「わかる国語 『怪人二十面相』」

 かぜ気味なので、葛湯を作って温まりながら、録画しておいた「わかる国語 だいすきな20冊」を見ました。昨日の午前中に放送されていたもので、大林宣彦監督が『怪人二十面相』を取り上げるというので楽しみにしていたのです。

 番組は、大竹しのぶの朗読から始まります。その後、大林監督と子どもたちの話し合いとなり、朗読や漢字(怪)の説明を挟んで二十面相や明智小五郎の心を想像して発表し合います。

 びっくりしたのは、出演者の小学生たちがとても賢いことです。朗読も気持ちが込められていますし、意見の発表の仕方もよくできていました。しかし、『怪人二十面相』を読んだことのない子たちにとって、この番組がどれだけ本の魅力を伝えていたかというと、疑問が残ります。あらすじや作品の背景、作者のことについてはまったくふれられず、話し合う場面だけで番組を構成してしまうというのは、いかに内容が深かろうと、小学生の子どもたちにとっては面白味に欠けるでしょう。短い番組であっても映像と音声、表示される言葉が心に残るものはたくさんあります。そうした工夫をして、『怪人二十面相』のおもしろさを存分に伝えてほしかった、そんな気がしています。

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2005.01.20

『ピピネラ』 松尾由美

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著者:松尾由美
出版:講談社文庫
ISBN:4062749726
発行:2005年 01月
価格:695円 (税込:730円)
採点:3.5点

[帯]
「ピピネラ」という言葉を残して夫が消えた……。
 夫を捜す旅に出た「私」には、
 人に言えない秘密がある。
 誰にだって、そんな秘密はある。
 大幅加筆修正、心に染みるエンターテインメント

[あらすじ]
 夫が失踪した。残された背広のポケットから一枚のメモが見つかったが、そこには「ピピネラ」という謎の言葉が書かれていた。「私」加奈子は夫が最後に目撃された上野を出発点に、行方を追う。しかし、彼女は身体が縮んでしまうという奇妙な現象に悩まされていた。

[感想]
 家に入ると身体が縮んでいくという誰にも言えない秘密を持った女性を主人公とした物語。素材自体はファンタジーに分類されるのだろうが、これは自己発見の物語である。

 身体に起きる不思議な現象に悩みながら、ようやく慣れた毎日の生活。夫を送り出し、買い物をし、食事を作るという平凡だが穏やかな日々が、突然の夫の失踪で終焉を迎える。加奈子はいつ小さくなるか分からないという危機感を持ちながらも、自らを奮い立たせて夫の行方を追う。外に出ることにも抵抗感を持っていた主人公が、友人の協力を得ながら次第に力強く歩み始める姿に、声援を送りたくなる。

 身体が縮む現象の理由、夫の失踪の事情、ピピネラという言葉の意味が一つにつながったとき、加奈子の自分探しの旅は終わる。ミステリ好きの習性で、すべての謎に答えを求めたくなるのだが、この作品では不思議が説明されることよりも、主人公がこれからどうなるのかと、そればかりが気になった。明るい未来を予感させる結末に好感が持てる。元気のないときには、こんな小説を手に取ってみるとよい。自信を取り戻していく主人公から、一歩踏み出す勇気を分けてもらえることだろう。

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2005.01.19

読書好きな子どもに育てよう

松尾由美『ピピネラ』を読み終わりました。失踪した夫を捜す女性の物語ですが、彼女は何かのきっかけで身体が縮んでしまうという不思議な現象に悩まされています。ファンタジーではありますが、よくある魔法ものではありません。1997年の作品に、大幅加筆して文庫となったものです。おもしろかったですよ。

 今朝の新聞に、文科相が総合学習の削減も視野に入れた発言をしたとの記事が出ていました。「私は国語と数学にもっと力を注ぐべきで、特に国語の力がすべてだと思っている」という考えには賛成です。

 子どもたちの読む力、書く力は確実に落ちていますが、それを引き上げるだけの時間がないのが現状です。新しい指導要領になり、国語の時間はずいぶん減りました。教科書会社も対応に苦慮しているようで、現行のある教科書では、「ごんぎつね」や「大造じいさんとガン」のような名作も、選択教材となっています。こうした作品にふれずに、小学校を終えてしまうというのも悲しいことです。

 思いついたので、以前みすべすに掲載した「読書好きな子どもに育てよう」をこちらの方にもアップしておきます。今から7年前、サイトを作ったときに書いたものです。

「読書好きな子どもに育てよう」

子どもを読書好きにするにはどうしたらよいかな、と悩んだ方に。

 

 最近、「読書離れ」という言葉をよく聞きます。98年の調査では、1ヶ月に本を1冊も読まない人が50%を越えたということです。読書は心の栄養、そして知能の発達にも欠かせないもの。そこで、「読書好きの子にするために」どうしたらよいか、ということを考えてみました。

 一昔前は、『坊ちゃん』や『吾輩は猫である』など子ども向けに編集された日本文学のシリーズがありましたが、最近の小学生にそれを読むことは難しいのが現状です。まして、『二年間の休暇』や『レ・ミゼラブル』などの海外文学など見向きもされません。読書をする習慣自体が失われつつあるのです。というのも、読書に対する意識が低下し、興味・関心が他のものに移っているためです。

読書好きにする方法

1 読み聞かせをする。
 小さくて字が読めなかった頃、お父さんやお母さんにお話を聞かせてもらった記憶はありますか?物語を聞いて、場面を想像したり、次はどうなるのかとどきどきしたり。知っている物語でも、何度も聞いて結末に安心したりしませんでした?読み聞かせというのはいつの時代でも大切なことなのです。毎晩お父さんやお母さんから聞く話で、子どもは頭と心を成長させていくのです。

2 お父さん、お母さんが読書をする姿を子どもに見せる。
 子どもは親の姿を見ています。お父さん、お母さんが本を楽しそうに読んでいると、子どももまねをしてみたくなるものです。文化的な側面を持った生活は、情操を育て、向上心を育てます。「知識を得ようとする行為」を見ることが、人間の生活の豊かさ、美しさを伝え、心を育てるのです。

3 子どもを図書館や本屋に連れていく。
 学校に行って自分で探しなさい、と言うのはだめです。よい本を教えない、本の探し方を知らせない、このような状態では、子どもは自分で探そうという気も起きません。お父さんや、お母さんが時間を作って、図書館や本屋に行くことが大事です。こんなにたくさん本があるんだよ、楽しい話はいっぱいあるよ、きみの知っていることなんて、世の中のほんのこれっぽっちなんだよ、と体験させることが大切なのです。自分の知識や常識、世界の狭さを知り、より広い世界を見いだそうとする心を育てるのです。大量の本を見、自由にさわることで新しい世界が目の前に開ける喜びを味わう、それをお父さん、お母さんがしてあげることで、子どもは親の偉大さ、文化のすばらしさ、知識欲というものを知ることになるのです。ただかわいがったり愛情を持って接するだけでは足りません。文化を伝えること、より優れたものや事柄に触れさせ、よりよい生き方を教えていくこと、これは子育ての中でとても大切なことです。

4 おもしろい本を教える。
 (そのためには、情報を入手し、自分で必ず目を通すこと)
 自分が子どもの頃に読んだ本を紹介することで、子どもはお父さん、お母さんの子どもの頃のことを想像し、一体感や共感を覚えるます。同時に、一つの物語を通して親子の会話を成立させ、新しい作品へと継続する興味をもたせます。これは、親の知識を伝えてもらう喜びを味わい、信頼感や文化への愛着を育てることにもなります。めんどうでも、お父さん、お母さんは楽しい本を探しましょう。そして、必ず読んで、読んだ後で子どもと語り合えるようにしておきましょう。自分の子どもに合う本は、親がいちばんよく分かるのです(そうでなければおかしいですよね)。あなたは自分の子どもがどんな本を読んでいるか、知っていますか?

読書の効能

1 知識の広がり
 本が読める、というのと、自分から読書をする、というのとはまったく違います。読んでいる子と読んでいない子では、差が生まれます。単に知識の広がりだけでなく、知識欲に差が出るのです。テレビや、ラジオなどと違い、文字を読むという行為は能動的でなことですから、習慣として身につけることが、さらに子どもを伸ばしていくのです。

2 文章に対する理解力の発達
 文章理解というのは、あらゆる場面で行われますが、この理解力が育つことは、学校においては各教科に表れ、社会人になれば、日々の仕事の成果や達成時間にも影響します。情報のインプットの差は、目に見えなくても大きな違いになっていくのです。

3 表現力の向上
 人と人との関わりの中で、自己を表現するのは大変重要なこと。言葉、言い回しを知っているということはとても大切なことなのです。そして、表現のTPOをわきまえるためには、読書は実に効果的です。

4 心の成長
 読書というのは、自分の体験していないことを体験できる、すばらしいことだと思います。主人公とともに、喜怒哀楽を感じることで、よりよい性格、行動、そして生き方を知ることができます。感情が豊かになり、そのコントロールの方法を知り、人生のさまざまな場面で気づかないうちに応用することができます。わたしは、これがいちばん大切な効能ではないかと思っています。

 では、具体的にどのような本を紹介したらよいか、ということですが、Mystery Best ???らしくミステリ系のものから選択しましょう。といっても、子ども向けの本は、ミステリの要素が入っているものが多いのです。読んで楽しい、興味が持てる、ハラハラする、そういうことを考えれば当然ですね。

 

『ふるやのもり』
 泥棒と狼が狙う家。中では、世の中でいちばん恐ろしいものは何か、おじいさんとおばあさんが話をしている。子どもにとって、驚愕のラストが待ち受ける名作。これはミステリの基本。

『とんことり』
 見知らぬ町に引っ越してきた女の子。引っ越しのその日に、郵便受けに花が入っていた。その次の日にもまた、別なプレゼントが…。郵便受けに入れてくれるのは誰なのか、何のために入れているのか、ラストがさわやかなすばらしい絵本。

『大どろぼう ホッツェンプロッツ』プロイスラー
 間の抜けた大どろぼうが大活躍する物語。笑える場面が多く、本を読む楽しさを堪能できる作品。ドイツの優良図書に選ばれたこともある名作。続編あり。

『グリックの冒険』斉藤惇夫
 町のリスが、野生のリスの住む北の森を目指して旅立つという話。盛り上がる場面を各所に配し、友情、信頼など人間の美しい心をさりげなく伝える感動のアドベンチャー。『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』と三部作になっており、どれも質が高い。

『誰も知らない小さな国』佐藤さとる
 小さな小さな人、コロボックルを探す話。主人公とコロボックルが、どのようにして出会うのか、その部分だけでも実におもしろく、どきどきしながら読める名作。

『ライオンと魔女』ルイス
 「ナルニア国ものがたり」として有名なシリーズの第1作。衣装箪笥を開けてみると、その向こうには不思議な世界が広がっていた、という子どもの夢をそのままに広げるファンタジー。『カスピアン王子のつのぶえ』『朝びらき丸 東の海へ』等に続いていく。

『怪人二十面相』江戸川乱歩
 言わずとしれた乱歩の少年探偵団シリーズ。次々に不思議な事件を起こす二十面相を相手に、小林少年と明智小五郎が大活躍を繰り広げる。ミステリの世界への第一歩としてはよい作品。謎、事件、対策、どんでん返し、推理、解決とミステリの醍醐味が子どもにも味わえ、推理の面白さと盛り上がりを肌で感じることができる。

『赤毛連盟』ドイル
 名探偵シャーロック・ホームズが活躍する物語。赤毛の男だけを、好条件で雇う謎の会社。そして起こる不可解な事件。論理の展開が子どもにとって驚きとなる作品。ホームズの名推理はこの他多くの作品でも読むことができる。

『813』ルブラン
 名探偵ホームズと人気を二分する怪盗ルパンの物語。変幻自在、堅牢な牢獄も頭脳で脱獄するとんでもない大泥棒。しかし、紳士的なところに読者は惹かれてしまう。『奇岩城』とこの『813』がおすすめ。

『ドリトル先生航海記』ロフティング
 動物と話をすることができる医者、ドリトル先生を主人公にした名作。レックス・ハリソン主演でミュージカル映画化されたこともある。主題歌はアカデミー賞受賞。映画と併せて読書の世界を味わい、生き物に対する愛情と、冒険の楽しさを知ることができる。

『ミス・ビアンカシリーズ』
 ねずみのミス・ビアンカが困った人たちからの伝言を受け取り、助け出す物語。冒険、活劇、スリル満点のシリーズもの。ディズニー映画にもなっているが、原作ははるかにおもしろい。

『消える総生島』はやみねかおる
 三つ子の姉妹と、とんでもない迷探偵が活躍するシリーズ。講談社青い鳥文庫から出ています。ミステリファンが読んでニヤリとするような部分がたくさん詰まった作品。作者のはやみねかおるは、小学校の先生。

『旅の絵本』
 旅の場面をかいた絵本。でも、景色の中をよく見てみると、どこかで読んだような話の場面があちらこちらに隠されている。いくつ見つけられるか、それがまた楽しみな絵本。

そのほか、『名探偵カッレくん』『少女探偵ナンシー』『ゴジラ、東京にあらわる』『アイドルは名探偵』など、楽しい本はたくさんあります。

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2005.01.18

『バクト!』 海冬レイジ(こうさぎ)

きのう、著者も設置したの?
わとそんは本にカバーしなかった。
きょうわとそんがISBN♪
詳細。mysterybestは、

本の詳細ページへ著者:海冬レイジ出版:富士見ミステリー文庫ISBN:48

といってました。

*このエントリは、こうさぎの「わとそん」が書きました。

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『ボランティア・スピリット』 永井するみ

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著者:永井するみ

出版:光文社
ISBN:4334738133
発行:2005年 01月
価格:571円 (税込:600円)
採点:4.0点

[帯]
 善意と偽善の間で揺れる人々……
「読者はまずその衝撃にゾクリと身体を震わせることになる」藤田香織(書評家)

[あらすじ]
 市民センターの一角で開かれる日本語講座には、毎週多くの外国人労働者が参加する。。ある日、参加者の青年が放火の疑いをかけられ、事情聴取を受けることとなった。勤務態度も良好で、誠実と評判の青年がなぜ――。リストラで居場所をなくし、ボランティアとして講師を始めた山崎は、青年の職場を訪れた。

[感想]
 日本語講座の講師と参加者の周囲で起きるさまざまな出来事を描いた連作短編集である。小さな誤解から、善意の心の中に疑問が生まれる。それは次第に大きくなり、昨日まで分かり合えていたはずの信頼が失われていく。

 生まれた国、言葉、肌の色や顔かたちが違いが心のつながりにどれほどの影響を与えるのか。登場人物の不安のほとんどは自分自身の意識の問題である。事件が解決され、不安が取り除かれた後にぽっかりと空いた心の隙間。それを見つめることで、彼らは改めて自分の心の有り様に気付く。そして読者は、登場人物一人一人がその隙間をどのような気持ちで埋めていくのだろうと想像しながら、「ボランティア・スピリット」とは何かを考えさせられることになる。温かく、柔らかな文体の中に、深い内容を含んだ優れた作品である。

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2005.01.17

『もつれ』 ピーター・ムーア・スミス

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著者:ピーター・ムーア・スミス /伏見威蕃
出版:創元推理文庫
ISBN:4488196020
発行:2004年 12月
価格:1,300円 (税込:1,365円)
採点:4.5点

[帯]
 悪夢のようなサスペンス,デビュー作にして傑作!
 もつれた糸がほぐれていくとき
 その先に見えてくるものとは……?

[あらすじ]
 サイコロジストのキャサリンは、パイロットという統合失調症の青年を担当することとなった。だが、彼の心の中には、20年前に起きた妹の失踪事件が暗い影を落としていた。脳外科医の兄、二重にものが見えるという母親、そしてパイロット。この家族に何が起きたのか。秘められた謎は記憶の糸によってゆっくりと手繰り寄せられていく。

[感想]
 心の病に冒された青年の目を通して語られる幻想的なミステリ。しかしその内容は重厚で、心揺さぶられる。

 物語はパイロットという名の青年が、母親の目の疾患をきっかけにエピソードと呼ばれる発作的な症状を起こすことから始まる。彼の記憶は20年前に遡り、妹が行方不明となったパーティーの晩の様子が鮮明に蘇ってくる。子どもの視点はいつの間にか神の視点となり、その場にいないはずの出来事までも青年は語り続ける。どこまでが真実なのか、そして青年は現実を認識しているのか。悪夢はいつの間にか読み手の心までも捕らえてしまう。

 消えた少女とその姿を瞼に焼き付けた兄。二転三転する物語に興味は尽きることなく、真相の衝撃には寂寞の感を禁じ得ない。リチャード・ニーリィの迷宮に、トマス・H・クックの叙情を加えたような印象を受けた。兄弟・親子・夫婦の絆が一つの事件から縺れ、絡み合い、解れていく様をじっくりと読み味わいたい作品である。

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2005.01.16

『バクト!』 海冬レイジ

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著者:海冬レイジ
出版:富士見ミステリー文庫
ISBN:4829162864
発行:2005年 01月
価格:560円 (税込:588円)
採点:3.0点

[帯]
 富士見ヤングミステリー大賞!
 第4回大賞
 名うての賭博師たちに対して、清純派教師・音無素子&
 天才高校生ギャンブラー・国定ヒロトが挑む大バクチ!!

[あらすじ]
 逮捕され、記憶を失って入院した教師・音無素子は、見舞いに来た同僚の錦織に、わずかに残ったギャンブルの記憶を話し始める。不登校の生徒、国定ヒロトを訪ねた日のこと。彼にギャンブルの奥義書を譲ってほしいと頼んだこと。そもそもの原因は、教え子一家を救おうと手を出したギャンブルだった――。

[感想]
 ブラックジャック、ポーカー、ルーレットと全編ギャンブルで埋め尽くされた作品。主人公音無は達人ヒロトに弟子入りし、修行を積むのだが、空気に飲まれて引くに引けない状況に陥っていく痛々しさが何とも楽しい。複雑なルールの説明を避け、初心者である主人公が語るというスタイルをとったことで、その手のものに興味のない読者でも気軽に読める作品となっている。

 莫大な遺産を持つ無敵のギャンブラー高校生と、夜な夜なカジノを渡り歩く妹、この奇抜な設定には戸惑ってしまうが、物語が進むにつれ違和感はさほど感じなくなる。ただし、主人公を含めた三人の造形にもう少し深みがほしい。互いの関わりについても、思いの外あっさりと描かれている。また、ミステリ系の文庫であることから、当然トリックも用意されているのだが、こちらにはそれほど重きを置いていないように感じられる。仕込みはよいだけに、見せ方に一工夫ほしいところである。

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2005.01.15

『QED 鬼の城伝説』 高田祟史

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著者:高田崇史
出版:講談社ノベルス
ISBN:4061824090
発行:2005年 01月
価格:820円 (税込:861円)
採点:4.0点

[書き出し]
 七月後半の薬局は忙しい。
 子供たちが夏休みに入り、家族揃って海やプールに出かける頃になると、一気に子供の病気が増える。

[帯]
 桃太郎に虐げられし、鬼たちの慟哭が聞こえる。
「QED」シリーズ第九弾!!

[あらすじ]
 吉備津神社に伝わる鳴る釜神事。鳴れば吉という伝えとは逆に、不吉を告げる釜が鬼野辺家にあった。鳴るたびに当主は命を落とす――。そして、結婚を間近に控えた鬼野辺家の長男・健爾の首が土蔵の中で発見された。

[感想]
 歴史の謎と不可解な事件とを絡めたQEDシリーズの9作目。シリーズ外の『鬼神伝』を含め、「鬼―人」の関わりについては一貫して触れられてきたが、今回は鬼ノ城、桃太郎伝説と鬼退治にまつわる伝説をストレートに取り上げた作品となっている。

 密室となった土蔵の中で発見された生首。鳴ると不吉なことが起きる釜。そして再び起きる謎の死――。魅力的な謎が序盤から提示されるところが嬉しい。歴史ミステリでは、謎解きと歴史の解釈とのバランスが難しいところだが、このシリーズでは毎回どちらに関しても工夫が凝らされている。特に今回は、ダイイングメッセージの扱いがおもしろく、一見奇抜でありながら、それを違和感なく処理しているところを評価したい。

 歴史の中で消えていった人々の思いが文字や言葉、今に残る様々な事象の解釈によって明らかにされていく。通常では考えられない不可思議な出来事、心の動きが「そんなはずはない」から「あり得なくもない」、「そうかもしれない」へと変わっていく。この変容の過程が実に楽しい作品である。

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2005.01.14

新刊ミステリ 店頭確認

『押絵と旅する男』 江戸川乱歩全集 光文社文庫 980円
『代価はバラ一輪』 エリス・ピーターズ 光文社文庫 600円
『冬のスフィンクス』 飛鳥部勝則 光文社文庫 700円
『死んでも治らない』 若竹七海 光文社文庫 580円
『ボランティア・スピリット』 永井するみ 光文社文庫 600円
『ミステリーファンのための古書店ガイド』 野村宏平 光文社文庫 650円
『終戦のローレライ1』 福井晴敏 講談社文庫 490円
『終戦のローレライ2』 福井晴敏 講談社文庫 730円
『透明な貴婦人の謎』 本格ミステリ作家クラブ 講談社文庫 790円
『ピピネラ』 松尾由美 講談社文庫 730円
『天使の背徳』 アンドリュー・テイラー 講談社文庫 1000円
『妖異七奇談』 細谷正充 双葉文庫

 『押絵と旅する男』は江戸川乱歩全集の第5巻。表題作の他、「蟲」、「蜘蛛男」、「盲獣」を収録しています。文庫としてはよいよい装丁で、価格も手頃ですから、乱歩をこれから読んでみようという方には強くすすめたいシリーズです。
 『死んでも治らない』は元警察官大道寺圭の活躍(?)を描いた短編集。構成が凝っています。『ミステリーファンのための古書店ガイド』は現物をまだ見ていません。近所の5軒の書店では、すべて売り切れでした……。『代価はバラ一輪』はカドフェルシリーズの13巻。コンスタントに出されていて、安心できます。
 『終戦のローレライ』は傑作ですね。第二次世界大戦末期、密命を帯びた一艘の潜水艦が日本を出発します。楽しめる作品ですね。映画化に際し、文庫となりました。全4冊です。『透明な貴婦人の謎』は『本格ミステリ01』を二分冊にした第2巻に当たります。泡坂妻夫、鯨統一郎、柴田よしき、西澤保彦などの短編が収録されています。『ピピネラ』は『バルーンタウンの殺人』の松尾由美の作品。突然姿を消した夫の足跡を追うという物語。ピピネラというのは、『ドリトル先生と緑のカナリア』(懐かしい!)に登場するカナリアの名前です。『天使の背徳』は前作『天使の遊技』と次作からなる三部作の一冊です。三作目で英国推理作家協会賞の歴史ミステリー賞を受賞しているので、こちらも読んでおいた法がよいでしょう。
 『妖異七奇談』は妖怪が登場する時代小説のアンソロジーです。収録作品は以下の通り。「黒川王」夢枕獏、「飛鏡の蟲」朝松健、「あやかし」山田正紀、「小袖の手」宮部みゆき、「両口の下女」東郷隆、「幕末屍軍団」菊地秀行、「清太郎出初式」梶尾真治。

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2005.01.13

『シュプルのおはなし3』 雨宮諒

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著者:雨宮諒
出版社:メディアワークス/角川書店(電撃文庫)
ISBN:4840229074
発行:2005年 01月
価格:630円 (税込:662円)
採点:3.5点

[帯]
 君は泣いていたんだね
 僕の分まで涙して。
 優しい元気をくれたんだ――。
 宝物から紡ぎだされる珠玉のおはなしたち。
 第10回電撃ゲーム小説大賞<選考委員奨励賞>受賞作第3弾

[あらすじ]
 ガラス玉を見つけたシュプルは、友達のアロワに占い師の物語を語り始める。とてもよく当たる占い師と、幸せを呼ぶ銀細工師、そして、二人が結びつけた愛の物語を――。

[感想]
 少年シュプルがおじいちゃんの木箱の中の品物から、物語を作り出す。今回は愛の物語「運命の人」、本格推理「消えた金貨」、そして勇気と友情の物語「キング」の3編が収められている。

 「運命の人」は、占い師となったシュプルが、相談に訪れた女性の恋を実らせる。占う言葉は二人の心を結びつけ、偶然は必然へと変わる。ハッピーエンドが初めから予想される作品だが、おとぎ話の夢が詰まった微笑ましい作品である。

 「消えた金貨」は本格ミステリの形式を取り入れた作品。肘掛け椅子に腰掛け、パイプをくわえた名探偵シュプルが、小さな質屋から消えた金貨の謎を解き明かす。随所に散りばめられたアイテム、小さな出来事の裏にある犯罪計画を暴くといった構成と、ホームズものの優れたパスティーシュとなっている。これまでの作品にも、ミステリの要素は感じられたのだが、シュプルを探偵に据えたことで、謎解きの楽しさがストレートに伝わる作品となっている。

 読み終えて感じられるのは、これまでシュプルを助けて大活躍するムルカが一歩退いた位置にいること。特に3話目の「キング」では意外なところに登場して読者を驚かせてくれる。以前は厳めしかったおじいちゃんも、ここにきてずいぶんと柔らかくなってきた。1,2巻でのキャラクターの性格付けが定着したことから、この3巻ではそれを構成に取り入れ、十分な効果を上げている。

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2005.01.12

『フォルマント・ブルー カラっぽの僕に、君はうたう。』 木ノ歌詠

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著者:木ノ歌詠
出版:富士見ミステリー文庫
ISBN:4829162872
発行:2005年 01月
価格:560円 (税込:588円)
採点:3.0点

[帯]
 富士見ヤングミステリー大賞!
 第4回 佳作
 機械仕掛けの〈伽音〉。僕だけの大切な歌姫。
 〈伽音〉に触れて、そして僕の最後の冬は始まった――。

[あらすじ]
 限られた者だけが居住を許される海上都市。音楽を学ぶ「僕」は、ある日産業廃棄物処理場で一人の少女と出会う。名前は伽音、そして彼女は、自分のことを持ち主をなくした人型のシンセサイザーだと語った。その日から、「僕」と伽音の二人の生活が始まるのだが、不治の病に冒された「僕」の最期の日は刻一刻と迫っていた。

[感想]
 首にコードを接続された機械仕掛けのヒロイン。彼女の歌声は、主人公に残されたわずかな時間を暖かく照らし続ける。音楽に対する熱い思いを一頁ごとに凝縮させた作品である。音楽振興のために造られた海上都市。その処理場に伽音はなぜいたのか、彼女は何者なのか。作曲コンテストに端を発する誘拐事件が、主人公と伽音の運命を強く結びつけていく。

 伽音の生い立ちの謎や、声を失った姉の綺音の秘密など、重要と思われる部分が思いの外あっさりと明らかにされている。特に、悲劇的な結末を予感させる終盤部分からエンディングまでは展開が早く、作品の世界観や雰囲気に浸り始めたときに次の場面へと進んでしまう点は惜しい。もしかしたら別バージョンの結末もあったのではないかと考えてしまったのだが、取り上げたテーマを考えれば、倍の時間をかけても楽しみたいところである。一方、音楽に関する記述は、興味のない読者にとっても押しつけがましいところがなく、スムーズに読み進めることができる。作者の熱意が感じられる作品は、読んでいて気持ちがよいものである。

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