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2004.12.31

『推理小説』 秦建日子

30901686

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著者:秦建日子
出版:河出書房新社(ハードカバー)
ISBN:4309016863
発行:2004年 12月
価格:1,600円 (税込:1,680円)
採点:4.0点

[帯]
 『最期の弁護人』『共犯者』『ラストプレゼント』……
 最注目の脚本家が放つ
 驚愕のデビュー小説!

[あらすじ]
 「アンフェアなのは誰か」。殺人鬼は一枚の栞に謎の言葉を残して次々と凶行を繰り返す。高校生、会社員と被害者には何の共通点もない。検挙率ナンバーワンの敏腕刑事が捜査に乗り出すが、その頃各出版社には事件の詳細を描いた「推理小説(上)」の原稿が届けられていた。その中には犯人しか知り得ない内容が――。

[感想]
 手がかりを残さずに犯行を重ねる緻密な計画性と、殺人予告原稿の落札を要求する大胆さ。メタ・ミステリの要素を取り入れた作中作の不思議な味わいも相まって、インパクトのある犯人像が作り上げられている。一方の捜査側には、「無駄に美人」の異名をとる敏腕刑事。キャラクターの造形は秀抜といってよい。展開もテンポがよく、音と映像を合わせたくなるほどスリリングな場面がそこここに散りばめられている。

 謎解きにはトリックと社会性を絡ませているが、どちらに偏ってもミステリファンには不満となりそうなところを、新たな手法で見事にクリアーしている。この部分は評価したい。大学のミステリ研究会、推理作家と編集者、受賞パーティーといったミステリファンの心をくすぐる仕掛けも適度に盛り込まれ、楽しめる一冊である。

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2004.12.30

『失われし書庫』 ジョン・ダニング

15170408

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著者: ジョン・ダニング
出版:早川ミステリ文庫
ISBN:4151704086
価格:900円 (税込:945円)
採点:3.5点

[帯]
 八十年前に失われた稀覯本の山と
 幻の作家の真実……
 元刑事の古書店主クリフに再び転機が訪れる!
 『死の蔵書』『幻の特装本』に続く
 古書店探偵クリフ・ジェーンウェイ・シリーズ最新作

[あらすじ]
 探検家バートンの稀覯本を落札したクリフを一人の老婦人が訪れた。彼女は、その本が数十年間に不法な手段によって奪われたものの一冊であると言う。かつて彼女の家にはバートンの初版本を始め、数多くの貴重な本が保管されていたらしい。わずかな手がかりを元に、クリフは失われた蔵書の捜索を開始するが、本に関わった人物が殺害され、彼自身も命を狙われてしまう。

[感想]
 古書を題材にしたシリーズ第3作は、バートンの空白の3ヶ月を埋めるという歴史ミステリの趣向を取り入れた重厚な作品となっている。老婦人の記憶から謎を辿るという設定は面白く、タイタニック沈没をテーマとしたミステリ『エヴァ・ライカーの記憶』を思い起こさせる。資料に当たるのはサブキャラクタであるため、主人公のクリフの活躍は体を張る場面が目立ってしまうのだが、本の追跡と殺人事件とが密接に関わっているため、謎解きの楽しさは存分に味わうことができる。また、今回登場する女性弁護士エリンは、文学ネタの会話でクリフと互角に渡り合う才女で、この二人の関係も読みどころの一つといえる。

 シリーズものではあるが、これまでの作品についての予備知識は不要。ミステリ好き、本(特に古書)好きの方にはおすすめしたい作品である。

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