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2004.06.21

蜘蛛の微笑

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蜘蛛の微笑
ハヤカワ・ミステリ文庫

著者: ティエリー・ジョンケ /平岡敦

出版社:早川書房
ISBN:4151747516
サイズ:文庫 / 174p
発行年月: 2004年 06月
本体価格:560円 (税込:588円) 
解説:平岡敦
装丁:the GARDEN 石川絢士
採点:3.5点

[書き出し]
 リシャール・ラファルグはゆっくりとした足取りで砂利道を散歩していた。屋敷の塀づたいに広がる木立を抜け、道は小さな池まで続いている。

[帯]
 男は愛人を監禁し、強盗は自慰をし、追跡者は獲物に刃を振りおろし、
 愛人はピアノを弾いて性器をさらけだし、謎と謎と謎とが絡み合う。

[感想]
「エヴ、聞こえるかい?今日は三人だ!」
 外科医リシャールは愛人エヴを監禁し、虐待する。行きずりの男たちと関係を持たせ、自分はマジックミラー越しにその行為を観察するのだ。一方、銀行を襲撃して指名手配されたアレックスは、古びた農家に潜伏していた。追われる日々にうんざりした男は、逃亡生活に終止符を打つ名案を思いつく。二つの物語の合間に「蜘蛛」なる人物に捕らえられた男の物語が挿入され、幻想的な雰囲気を醸し出す。運命の糸は絡まりながら衝撃の結末へと向かっていく。

 リシャールとエヴの異常な関係、逃亡犯アレックスの生活という二つのパートはそれぞれ単独で読めばシンプルなスリラーなのだが、これら異質な物語が「蜘蛛」の挿話によって攪乱され、読者の不安を極限まで高めていく。しかもそれらをすべて説明してしまう結末は、この謎に包まれたストーリーをなるほどと納得させる一方で、表現のしようのない読後感を残す。ハッピーエンドなのか、それともカタストロフィーなのか。やるせない気持ちの中になぜか救われたような思いもあり、強い印象が後を引く。この読後感を味わうためだけでも一読の価値はある。


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